第2話:居候
俺達は森の近くの村まで帰ってきた。
「ここまで来たら安全だから、ウチはかえるね~。」
「ええ、ありがとうございます。」
「ばっははーい!」
チョコは俺のパートナーだが森に自分の住処があり、今のところは必要な時だけついてきてもらっている。
ミリアムの家に一緒に帰宅すると、心配そうな顔をしたお父さんが出迎えてくれた。
「ミリアム今日は問題なかったかい?」
「お父さん、アルザスさんが一緒だから大丈夫だよ。」
「そうか・・・いつもありがとうございます。」
「いえいえ、居候させてもらっているので当たり前の事です。」
俺は森で襲われているミリアムを助けてから、彼女の両親にお世話になり家に客人扱いで居候させてもらっている。
今日もいつものように、夕食をミリアムと両親と一緒に食べていた。
「その・・・、アルザスさんは冒険者でしたよね?」
「はい。」
「私は冒険者についてよく知らないのですが、ここに滞在しているままでいいのですか?何か目的があったのではないのですか?」
「ええ、まあ・・・。」
「そろそろお発ちになる予定とかは・・・。」
すると、ミリアムが椅子から立ちあがり大きな声を上げる。
「お父さん!アルザスさんは私の命の恩人です!」
「ああ、それはわかっているよ。重々承知している。しかしだね・・・。」
「アルザスさん、心行くまで滞在してくださいね。」
「ああ・・うん・・・。」
その後はみな沈黙してしまい、夕食が終わったら俺は逃げるように客室へと逃げた。
◇◇◇
「そりゃそうだよなあ・・・もう半年もお世話になってるし。そりゃ出て行って欲しいよなあ。」
俺はベッドに寝そべりながら、これからどうするかを考えていた。
しかし、半年前に日本からこの異世界に転生してきて、これからどうすればいいのかわからない。
普通なら元の世界に戻るための手段を探したりするのだろうが、いい思い出のない俺はそんな気にもなれなかった。
「ダラダラとお世話になっているけど、そろそろ出ていかないといけないよなあ。まあ、明日は明日の風が吹く。明日になったら何とかなるだろ、もう寝よう。」
良くないとわかっているのだが、いつも大きな決断ができない。
そして面倒な事を明日に押し付けてしまう。
(良くないなあ・・・でものんびりできて食べて眠れるなら仕方ないよね。)
俺の意識はやがて途切れ、闇へと落ちていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます