第50話


「ミリア、そろそろ休むか?」


「ううん、まだ平気……だよっ!」


 瞬足で王都へと向かうことしばし、今の俺は普通にミリアと併走していた。

 残念なことに、コーナーで差を付けることはできなかったからだ。


 王都に至るまでの道は、一本道だということを完全に失念していた。

 一応ある程度蛇行こそしてるものの、これをコーナーと言い張っても虚しいだけだ。


 なので最初に軽く全力疾走して風になってからは、出力を上げることなく普通に身体能力だけでミリアと一緒に走っている。


 ミリアの身体強化はおよそレベル5ってところだ。

 未成人の十四才にしてはかなり頑張ってる方だと思う。まあ俺はその年の頃には、レベル7は使えてたけどな!(ドヤ顔)


 身体強化を連発していてはすぐに息切れしてしまうので、今は身体強化と魔力凝集を使うインターバル走のような感じで進んでもらっている。


 身体強化を使う際に重要になってくるのは、いかにして身体強化を長時間使うか、そして強化されていない時間を如何にゼロに近づけることができるかだ。


 ちなみに俺は身体強化であればぶっ続けで何時間でも使える。

 ただ精神的に疲れるし、魔力凝集でいい時はそっちを使うようにしてるな。


 あ、あと魔力凝集だけで済ませた方が身体が鍛えられるっていうのも結構大きいか。

 身体強化だとなんか身体全体が漠然と強化されちゃうから、上手く身体を鍛えるのが難しかったりするんだよな。


 ちなみにミリアがそんなインターバル走をしている間、俺は何も使わず素の身体能力だけで走っている。

 体力はどれだけつけておいても足りることはないからな。


 俺にはこの身体しかない。だからこれ一つをどこまでも極めるのみ。

 筋肉道に終わりはない。


「はあっ、はあっ……ちょっと休憩を……ひいっ!? なんか恍惚としてる!?」


「ああすまん、ついうっかり」


「ついうっかりでなんでそんな顔をするの!?」


 適当に休んだり、敢えて無理をさせて身体強化を連発させたりと色々とバリエーションを試しながらガンガン進んでいく。


 鍛えているという自己申告も嘘ではないようで、以前と比べると明らかにスタミナがついている。

 純魔力の操作も、純魔力を形質魔力に変えるまでの流れもかなりスムーズだ。


 魔力凝集は純魔力でそのまま身体の出力を上げる技で、身体強化は体内の魔力を魔法用の形質魔力に変える技。


 なのでこの二つに関しては右に出る者がいないくらいに鍛えている俺が見れば、彼女がどれくらい魔法の特訓を頑張ったのかがなんとなくわかるのだ。


 現時点でも上級魔法くらいなら使えるんじゃないだろうか。

 ミリアは潜在的な素質はそこまで高かったはずだが……多分だがこれ、どちゃくそ頑張ってたんじゃないか。


 俺が見たところ、既に今の彼女の力量はメインヒロインのアリアに勝っている。


 この調子で鍛えていけば、素質でいえば最上級の主人公周りのメインキャラクター達と匹敵できるレベルまで成長する……と思う。

 一体何が彼女をそこまで駆り立てたのだろうか。


(そこまで鍛えても、力を使う機会もあんまりないと思うんだがな……)


 どうやら現在『アンタッチャブル』はミリアの手を離れているらしい。

 彼女が裏社会の女王と正規ルートに入ることは、運命の強制力的なむちゃくちゃイベントでも起こらない限りはまずないだろう。


 ローズと普通の暮らしをすることを考えると明らかに過剰戦力だと思うんだが……まあこの世界、何かと物騒だしな。

 いざという時のために力をつけとこうというミリアの考え方も間違ってはいないだろう。


「よし、それじゃあそろそろ行くか」


「……うん、頑張る!」


 かなり身体を酷使しても未だやる気を見せるミリアに頷き、再び走り出す。

 彼女があまり無理をしすぎないように、少しペースを落としながら。

 そして途中で街の宿で休憩を挟んだりしながら、西に進み続けること一週間ほど。


「ねぇっ、あれ!」


「ああ、間違いなく……あれが王都キャンベルだろうな」


 ようやく俺達の目的である王都が見えてくるのであった――。

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