消えた生卵〜アラザール公国へのクラス転移③

関内 文香(せきうち ぶんこう)

アラザール公国へのクラス転移

2学期の終業式の朝、名鴨ながも県立前照寺ぜんしょうじ高校1年B組の教室全員が、ここアラザール公国へ異世界転移させられて、もう10日が経った。


転移者には魔法とか不思議なわざの力が顕現するそうで、私、加蔦かつた未夜みやは治癒魔法の「癒やしの聖女」と呼ばれている。


幼馴染の支倉はせくらたつみは時間や空間をねじ曲げる青魔導士。


もう一人の幼馴染の綾川あやかわ優梨ゆりは精神干渉魔法の紫魔導士だ。


幼稚園以来、高校までふたりとはずっと同じクラス。


アニメやラノベが好きな巽に言わせると、これは典型的な「異世界転移」だそうだけど、ともかく私達は、アラザール公国の領都にある騎士団宿舎にいる。


転移以来、騎士団宿舎の周辺が私たちの活動範囲の全てだった。


宿舎の食堂でご飯を食べ、宿舎の中庭で剣技や魔法の訓練をし、宿舎の裏庭の井戸端で休憩し、宿舎の大浴場でお風呂に入り、宿舎の寝室に戻ったら、へとへとで綿のように疲れて泥のように眠る。


そんな毎日を続けてきて、私達の魔法とか技とかの力は、この世界の住人と比較にならないほど強力なものになってきていた。


今日、転移組はアラザールの街の外に訓練を兼ねてはじめて出動する。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る