第2話
ダンジョン内だが周りからモンスターの気配はしないため落ち着いた話ができそうだ
「それじゃあ現状確認しましょうか」
「現状確認ですか?」
「正直今色々ありすぎて考えがまとまってないんです。いくつか質問しますが協力お願いします」
「ロサちゃんの頼みならなんなりと!」
「一つ目はあなたはこのダンジョンの主って本当なんですか?」
話がこじれ始めた原因であろう話題に単刀直入に聞く
「そうですね。証明する方法がありませんけど」
正直、虚言を見抜く技術はないためよくわからないが先ほど同様錯乱して言っているわけではなさそうだ
「二つ目は私がカラットさん殺すのになにか条件があるって言ってたけどなんでしたっけ?」
「わたしがロサちゃんを愛していることと、ロサちゃんがわたしに特定の感情を持っていることですね」
「その……愛してるって言葉にして伝えるのやめてもらえませんか?」
彼女のような誰が見ても惹かれる顔の人物から愛していると言われるのは一般的には嬉しいことなのだろうが私はムリなのだ
「言葉で伝えるのが一番手っ取り早い方法だとは思いますけどロサちゃんが嫌がるならしょうがないですね」
「それと特定の感情って?というかなんでそんなにあやふやなの?」
彼女が時期が悪いと言っていた理由の一つであろうことを質問する
「特定の感情とは特定の感情としか言えませんね……私自身どうしてその条件を知っているのかどうしてこんな体になっているのかもしかしたら忘れてしまっただけかもしれませんけど」
「忘れるって何年前からその状態なんですか?」
見た目の年齢は私より若いと思うのだが
「何百年前でしょうか……」
「カラットさん真面目に答えて」
「いえいえ真面目なんですよこれでも!わたしが傷つかないのと同じ理由でわたし年を取らないみたいなんですよ。名前をつけるならそうですねぇ……不変の呪いとでもしましょうか!」
「そ、そうなんですね」
唖然とするしかないが実際に彼女が傷つかないことは目にしたので年を取らないというのも本当なのだろう
「なんか軽い感じに受け止めるんですね。不老不死って人類のあこがれみたいなものだと思うんですけど」
「目の前の当事者が死にたがっている以上ロクなものではないことはわかりますし」
「あーなるほど」
「確認はすんだしこれからのことを話そうか」
「これからですか?」
「カラットさんは一応ダンジョン住みってことになるんですかね?」
「一応そうなりますかね。でもせっかくロサちゃんと話せたのでこれから仲良くなるためにも町?に出てみたいと思います!だから連れて行ってください!」
「わかりました。正直にいうとカラットさんの手助けがないとダンジョンから脱出するにも命がけだったし一緒に来てほしいとは思ってましたし」
そうして脱出は私の思った通りなんの障害もなく出ることが出来た
「外の空気はおいしいですねー」
大きな深呼吸をして彼女は言う
「空気に美味しいとかあるものなんです?」
「ありますよ!迷宮の中って自然の風が吹かないので新鮮な空気という概念がないんですから……」
「それはそうとカラットさん今日はどこに泊まるつもりなの?行く当てないなら安い宿は紹介できるけど」
「わたしお金持ってませんよ?なのでロサちゃん!お願いします!生活が安定するまで泊めてください!」
「は、はいわかりました……」
ものすごい勢いで頭を下げる彼女に拒否できなかった。
玄関の扉を開け部屋に入る。そういえば誰かを部屋にあげるのは初めてのことだ
「ここがロサちゃんのおうちですかー」
「なにもないですけどね」
「何もなくはないじゃないですか。ほらタンス!タンスがありますよ!」
そういってカラットはタンスの一番下の段を開ける
「これは……」
黒一色の魔術師のローブがぎっしり詰まっていることに彼女は言葉を失っていた
「どうかしましたか?というか勝手に人のタンスを見るものではありませんよ」
「ロサちゃん……おしゃれとかしないんですか?」
?なぜそんなことを聞いてくるのだろうか
「しないですけど?」
おしゃれとは趣味のはずだ。服装というのは最低限外に出るとき奇怪な目で見られることがないのなら問題ないはずである
「あ、カラットさんその中から一着差し上げますね」
「なんでですか?」
「明日になればわかりますので、あと寝るときはベッドをどうぞ」
カラットさんが普段活動しているであろう下層がどんな所かは知らないが私が普段活動している上層は洞窟のような造りになっている。ならばベッドを譲るのが善行だろう。私はタンスにしまってあるローブをいくつか取り出して寝床を作り始めた。
「このサイズなら一緒に寝られそうなので寝ませんか?」
ベッドに腰をかけ彼女が促してくる。
「え、遠慮しときます。というかカラットさんだけでそのベッドなら一杯になりますよね」
「遠慮なんてしなくていいんですよ~一緒に寝ましょうよ」
彼女の素性を知らない一般男性がこんなことをささやかれたら10人中10人が了承するだろうが彼女の素性を知っている私は警戒する
「そういって身体のどこか触ってこようとかしてません?」
彼女は私を大好きと言ったのだならば私は最低限の自衛をしなくてはならない。
「しませんよ!そんなにわたしロサちゃんのこと押し倒そうとしてるように見えます?」
「しないならいいんですけどね……」
ジっと見つめるがキョトンとした顔をされたので今夜は信用することにしよう
その夜は特になにもなく過ごすことができた
翌朝私はカラットより先に起きて身支度をすませる。寝床の一部と化していたローブの布団を一着引き抜き家に残っていたパンを食べていると彼女が起きてきた
「おはようございますカラットさん」
「知らない天井……あ、おはようございますロサちゃん!」
「悪いんですけど食べるものがないので朝食抜きで大丈夫ですか?」
カラットは呪いで死なないのだならば問題ないはずだ
「できれば食べたいのですけれど……」
「でもカラットさんって餓死もできないんですよね?なら食べなくても問題ないのでは?」
「えっと、餓死はしないんですけど飢餓感はずっと続くので何か口にしたいというのが本音です」
空腹は感じるのに死なないのか。ますます不便な身体だ。
「じゃあ今日の目的地の途中で買うことにしますね」
「目的地ですか?」
「はい。カラットさんに早急にお金を稼ぐ方法を身に着けていただいてここから出て行ってもらわないといけないので」
「ロサちゃんのかわいい寝顔をずっと見ていたいでここに泊めさせてもらえません?」
「私が常にカラットさんに襲われることを警戒しなくてはいけないのでダメです」
「ロサちゃんに嫌われたくないししょうがないですね。なら、お金は払うしロサちゃんに無言で何もしないことを神に誓うので泊めてください!」
彼女はまた頭を下げてきた。ここまで何度も人に頭を下げさせるのは申し訳なくなってくる
「そこまで言うならわかりました……ちゃんとお金は払ってくださいね!」
「ありがとうございます!それで話を戻しますけどお金をどうやって稼ぐんです?」
「え?カラットさんにピッタリな仕事があるじゃないですか」
それでもピンときていないようだ
「探索者です。ダンジョンの主ならダンジョン探索者になりましょう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます