藤
第33話
学校は新学期が始まって、最近は忙しい。
今日は休日で、家でゴロゴロしている。
咲茉から「今日の昼頃に神社に来て」という連絡が来ていた。
どうだったのか気になって、ずっと胸がドキドキと鳴っている。
いつもなら、あっという間に昼になるのに、今日は遅く感じる。
やっと昼になり、ごはんを食べると、すぐに神社へ向かった。
神社の前に着く。
走ったからか、緊張でか、胸がドキドキと早く鳴る。
心を落ち着かせ、麦さんに会いに行った。
「わざわざ来てくれてありがとね、桜雨ちゃん」
「よっ、桜雨」
いつもとは違って神社の中に入る。
「…どう、でしたか?」
「呪いを解く方法が分かったよ」
「…七海くんが呪いを解くカギだったんですね!」
「ははっ、そうだ。今までお疲れ様」
「良かったぁ…。その、呪いを解く方法は?」
「…言ってもいいんだが、前世を全て思い出したほうがいいだろう」
「そうですか」
「まだ、分かってないことがあるだろ?」
「そうですね。呪いを解く方法が分かっただけで、安心です」
「そうか。良かった」
「はぁ、やっと気づいたな、姉さん」
そう咲茉に言われ、なぜか涙が出てきた。
「ど、どうした?感動したのか?」
「何か、分かんないけど」
「何だそれ」
嬉しいからなのか。
もしくは、悲しいからなのか。
すると、辺りの景色が変わった。
昔の神社。
目の前には天舞がいる。
「天舞…。これから、頼んだよ」
「どういう意味だよっ」
天舞の目には、涙が溜まっている。
そして私は、涙を流している。
「天月を、お願い…」
「だから!」
何だか、悲しい空気に包まれている。
「天舞…。…来世で、遥夏のそばに、いてあげて…。姉の願いを、叶えてくれる?」
何?
何が起こってるの?
「分かったから!姉さん!」
「お願いね、天舞…」
「そんなこと言わないで!天月が悲しむだろ!」
「ごめん…」
「姉さん!死ぬな!」
死ぬな?
…私、死んだの?
でも、そんな年齢じゃない。
病気?
…それとも、自ら?
胸が苦しい。
目の前に見えていた景色が薄れていき、天舞が見えなくなっていく。
…本当にごめん。
そんな感情が、最後に伝わってきた。
「桜雨?」
辺りは、もとの景色に戻っていた。
「…私は、何で死んだの?」
「…前世を見たんだな。そろそろ全て分かるかもね」
「答えてよ」
「…それは…」
「…言えないか。…でも、何で咲茉が七海くんと兄弟になったのか分かった」
「何?」
「私が頼んだからでしょ?来世で、そばにいてあげてほしいって」
「そうだよ。天雨の最後の頼みだった。姉さんと僕の能力は強かったから、それが契となって僕は、ここに生まれたんだろ」
「…そう。でも、何で私はその願いを?自分がそばにいればいいのに」
「…そうだな。…仕方なかったんだろ」
「…まだまだ分からないことばかりだね」
「ちょっと待ってて」
そう咲茉が言うと、どこかへ行ってしまった。
「桜雨ちゃん。もし全て分かったら、また来ておくれ」
「はい…」
「…前世と向き合うことは、全てが良いことじゃない。もちろん、悲しい出来事も思い出す。その覚悟はあるか?」
「…はい」
そして咲茉が戻ってくると、花を渡された。
「はい、これ。藤の花だ」
「藤?」
前に桜を渡された時のように、前世は見えない。
「それは、誰かと結びつきのある花だ」
「結びつき?誰と?…もしかして、七海くん?」
「きっと分かるよ」
「ちょっとー」
何の意味があるのか分からないまま、その藤の花を家に持って帰った。
家に着いてから、藤の花の花言葉を調べた。
何か、分かるかもしれない。
えっと…。
花言葉は、「優しさ」「決して離れない」。
んー、分からない。
悪い意味ではなさそうだけど…。
何で、これを渡されたんだろう。
しばらくしても、何の意味があるのか分からなかった。
前世も見えないし、花言葉からは何も分からないし…。
誰かと結びつきがあるって言われても…。
バイト中にそのことばかり考えている。
暇な時間なら、なおさら。
「おーい!葵さん、どうした?」
「え?あ、なんでもないよ」
七海くんが目の前に現れると、突然、前世が見えた。
「遥夏…。ごめんね、本当にごめんね…」
そう天雨は言って、お墓に藤の花をお供えしている。
…どういうこと?
遥夏は、死んだの…?
何で?
何でよ。
悲しさが襲いかかってくる。
涙が出そうになる。
すると、目の前にいる七海くんと目が合う。
七海くんは、ん?と首を傾げて私を見ている。
悲しい。
どうしようもなく悲しい…。
一体、何があったの…?
その時、風間くんと芽原くんも現れ、急に胸が強く苦しくなる。
ギュッと胸が押しつぶされそうになりながら、意識が遠のいていく。
七海くんらの声だろうか。
微かに聞こえるけれど、返事ができない。
そして私は、全てを思い出した。
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