第13話:学校復帰で大混乱!?
朝からやたらテンションが高い、というか妙な緊張をしている俺、黒辻レイ。
理由は簡単。
今日は久々に“普通の高校生活”に戻る日だからだ。
とはいえ、数日(いや、実際はもっと長い)行方不明扱いだったのに
どう取り繕えばいいのか……。
「レイ、なにソワソワしてるの?」
隣で一緒に歩く少女――モモが、不思議そうに首をかしげている。
「いや、学校ってところが……うーん、あっちで言えば“学舎”みたいなもんかな。まあ要するに、俺が通わなきゃいけない場所なんだよ」
「そうなんですね。私も見てみたいです!」
「いやいや、今日はまだお前に身分証明書が……。
とりあえず留学生だって書類上はしてるけど、急に一緒に入るのは難しいから、今日はお留守番で……」
俺はちょっと焦って言うが、モモは「しょんぼり……」と肩を落とす。
「ごめん、落ち着いたら案内するからさ。
家でヒメさんと母さんと適当に過ごして」
「はい……わかりました……」
その様子があまりに可哀想で、俺の方が申し訳なくなる。
それでも、まずは自分が学校の連中にどう説明するか、そっちが先だ。
◇◇◇
校門をくぐると
すれ違うクラスメイトや先輩が一斉にこっちを凝視するのがわかる。
あぁ、こりゃ完全に噂の的だな……。
教室に入るなり、いきなりクラスメイト数名が押し寄せてきた。
「おいレイ! どこ行ってたんだよ、お前!」
「海外留学なんだって? でも連絡くらいしてくれたらいいじゃん!」
「彼女ができて駆け落ちしたって噂もあったぞ!」
好き放題に言われて、俺は頭を抱える。
仕方なく「ちょっと家庭の事情で海外に……親戚の家で手伝いしてたんだ……」
と苦しい言い訳を披露。
クラスメイトたちは「そっかー」「連絡とれなかったから死んだかと」
と納得しかけているのかいないのか、微妙な反応。
「でもまあ、無事でよかったよ!」
「クラスLINE見てないの?
行方不明で警察沙汰かもって噂になってたんだから!」
「うわ、マジで……ごめん、スマホも壊れちゃってさ」
なんとかその場をしのいでいると
担任の先生が入ってきてホームルームが始まった。
先生からも
「黒辻、無事で何よりだが、ちゃんと事前に届けを出すべきだろう?」
と軽い説教。
俺は平謝りするしかない。
けど、これで一応、クラス内の“復帰挨拶”は済んだみたいだ。
◇◇◇
授業が始まっても、俺は気が気じゃなかった。
ノートとペンを久々に触ると、なんだか新鮮。
異世界での激闘が嘘みたいだ。
教科書の文字を追いかけながら
「いやー、これが平和ってやつだよな……」としみじみ思う。
隣の席の友人がニヤニヤしながら小声で聞いてくる。
「なあ、ほんとに彼女できたわけじゃねえの?」
「いねえよ、そんなの……」
……一応、モモがいるけど、あれは違う。
たぶん違う。
ごにょごにょ。
しかも、昼休みになると別のクラスメイトが
「レイ、お前の家、やけに可愛い子が出入りしてるって噂あんだけど!?」
と突っついてくる。
どうやら、近所で一瞬見かけたモモの姿を目撃したやつがいるらしい。
怖いな、現代の情報網。
「ま、まあ親戚の子が来てるだけ。気にすんなって」
「ふーん……まあ、レイだしな……」
何やら納得しているのかしていないのか。
もう疲れた。
◇◇◇
放課後、部活勧誘のポスターが貼られた廊下を歩いていると
友人たちが「久々だし、カラオケ行こうぜ」と誘ってきた。
けど正直、家に残ってるモモのことも気になる。
悩んだ末に「悪い、今日は家に急ぎの用事があるから」と断る。
みんなは「なんだよケチ!」と笑いながら去っていった。
「ふう……」
俺は靴箱へ向かいながら、大きくため息をつく。
学校生活は悪くないが、今は色々事情が違いすぎる。
玄関を出ると、西日に照らされる校門がやけに眩しく見えた。
「早く帰って、モモに大丈夫だったって伝えないとな」
家の玄関を開けた瞬間
「おかえりなさい、レイさん!」と満面の笑みで迎えられるんだろうか。
ちょっと想像するだけで、こっちまでニヤけそうだ。
そんなごく平凡な日常。
……でも、この平和が続くとは限らない。
背後から吹き付ける風に、ふと不安がよぎる。
この時点ではまだ知らない。
すぐ近くで“暗黒”の影が忍び寄っていることを――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます