面白暫時

@tateba_factory

飛べないフクロウの赤ちゃんの使命──エッホエッホと走る夜

「エッホエッホ」


 夜明け前の森を、小さなフクロウが駆けていた。

 丸い体を揺らしながら、短い足で地面を蹴る。


 「エッホ、エッホ」


 羽ばたけばすぐなのに、飛べないのだ。まだ羽はふわふわで、風に負けてしまう。だから走るしかない。


 森を抜けると、峠が待っていた。小さな体にはあまりにも高い坂。でも、止まれない。大事なことを、伝えなきゃ。


 「エッホ、エッホ!」


 峠を越えたら、今度は街だ。夜明け前の街はまだ静かで、石畳がひんやりと足に染みる。誰もいない広場を駆け抜け、最後の角を曲がると——


 そこに、目的の人がいた。


 眠たそうにあくびをしながら、フクロウと同じくらいの背丈の少女が、扉の前に立っていた。


 「……おや?」


 少女はしゃがみ込み、駆け寄ってきたフクロウをそっと受け止めた。その手のひらに、小さなクチバシがそっと何かを落とす。


 それは、夜の森で拾った、小さな指輪だった。


 「……え?」


 少女は目を見開いた。


 「これ……お兄ちゃんの……?」


 昨日、兄がなくしたと言って探していた、大切な指輪。


 フクロウは少女の腕の中で、くたくたになりながら、最後のひと鳴きをする。


 「エッホ……」


 その声が安堵に満ちたものだったと気づいたのは、少女がそっとフクロウの頭をなでたあとだった。

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