絵本

歌をうたおう。生きることをあきらめそうになったときに。歌をうたおう。明るさの中に悲しさの混じる歌を。歌をうたおう。生きることをあきらめそうになったときに。歌をうたおう。懐かしさがひびいてくる歌を。


僕は君を愛すけれど、ハニー、桃源郷はずっと遠いねえ。汚染された空気の中を、悪意に染まった情報の海を、僕たちは何度、泣きながら歩いていたか分からない。春は、僕たちにとってひとつの記号だった。希望に近似した、未来の写し身だった。


死なないで、ハニー! 僕たちの未来は悲しいくらいに長いじゃないか! 楽しいことがいっぱいに待った、僕たちの未来はどこだろう? 僕らは、あと100ページで結末を向かえるSFの登場人物じゃ、ないはずだよね?


歌をうたおう。生きることに飽きても歌っていよう。歌をうたおう。明るさの中に悲しさを秘めた歌を。歌をうたおう。生きることに飽きてもなお歌っていよう。ね、歌をうたおう。懐かしいメロディーをくり返していようよ!


僕は君を愛すけれど、君は僕を愛すかい?……いや、そんなことはどうだっていいのさ。若さは、おろかさに最も近い未熟だから、僕たちはきっと、もっとあそべる。夜ごとにくり返す単調なセックスにだって、未来が秘められていないとは言いきれないさ……! 分かるかな、分からないかな。いや、そんなこと、どうだっていいのさ。きっと…………



いのり。という言葉を、俺はそのとき深く深く思い出そうと努めていた。

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