高田の散文詩・小説集
高田
うたのうたったうた
感覚を開放して。あなたの春はあなたのなかにすでに萌芽している。ひとつの季節に吹く風がひとつの季節だけを表現しているだなんて嘘だ。気付いているでしょう、この晩冬の風の中には春のけはいが濃厚に混じっている。
あからさまな祈りよ、せめて歌になるまで。私は、私であるという一点において、なんどでも悲しい物語を、歌を口ずさみながら通過してきた。私は、花々の咲くという啓蟄の季節に向かって、あからさまな希望を喧伝しながら、足音高く、日々の路面を歩いていった。
『ねえ! 私たちの生きた世界が、ここまで美しかったことがある?』
あなたはそういってくるくると回りながら踊る。失われた古歌を口遊みながら。私は、すこしばかりの嫉妬を感じながら、あなたの声をより確かなものにしようと、唱和の歌声を重ねることを忘れなかった。
感覚を開放して。あなたの春はあなたのなかにすでに萌芽している。ひとつ季節に咲く風がひとつの季節だけを表現しているだなんて嘘だ! 気付いているでしょう、この季節は既に祝祭を用意している。
あなたのことを、慕えど、こいねがえど、私はわたしの写し身であることを辞めない。私の表現には不自由がある。風よりも透明で清らかな枷がある。私が希っているのも、あなたの写し身でしかないことを、私は、どう解釈すればいいのでしょうか。
『ねえ! 私たちの生きた世紀が、ここまで美しかったことがある?』
あなたはそういって、笑いながら、歌いながら、くるくるくるくる回転しながら、あたらしい季節を呼び寄せようとしている。私は、あなたの美しい写し身、終わりのないと噂された、人類の古歌。あなたに歌われるためにだけ存在する、満開の花桜をあらわす、ひとつの暗号(コード)。
反歌
うたいなさい時が花弁を奪うまで私は暗号(コード)誇らしき古歌
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