:【悲報】はぐれメルトに転生した俺、HP3で異世界住民から経験値を狙われる模様〜ヒロイン全員レベル99にしたら異世界テンプレが崩壊した〜

さつきいちご

第一章 はぐり、転生篇

第1話 自己紹介と転生までは簡潔に行うべし


 人もまばらな帰り道、ヘッドライトが迫ってくる! おいおいマジか!


 暴走トラックにつっこまれた俺は持ち前の逃げ足でかわしていた。



 電柱にめり込んだトラックから降りてきたのは、運送屋の制服と帽子を被った金髪のギャルだ。



 てっきり謝るものかと思ったら、


「はぁ? 死んでねーし。なんでかわしてんの?」


 死……? え?


「こ、殺す気なんですか? 本気で?」



 間抜けな俺の質問にギャルが告げる。


「いいこと教えたげる。あたし、転生屋のシルヴィ・アル・デ・ヴェールチ。長いからしぃちゃんでいいよ」



 お前の名前なんか聞いてないわ! 


 と言いたいところだが、死の恐怖に怯えている俺は「そ、そすか、カワイすね」と呟くことしかできなかった。


「転生屋のバイトして結構経つけどぉ、かわしたやつは初めてだわぁ」

 


「転生屋…さんですか?」


「要するに、異世界転生のバイトだし。あそこの魔法のトラックで弾かれたやつは適当な異世界に転生されるんよ」


「へ、へぇ…」


 何言ってんのこいつ?


「そんでノルマあるしぃ、弱そうなやつ見つけたら片っ端からトラックで引いて転生させてたんだよね」


「ひ、ひでぇ」


「昨日も30人くらい適当に転生させたしぃ」



 けたけた笑うしぃちゃん。そのお尻からぴょこぴょこと黒いしっぽが見えてる。

 

 こいつ、もしかしなくても悪魔だあああ!




「どうせあんたみたいなさえねーお兄さんはさぁ、生きてたって良いことないっしょ。トラックに轢かれて異世界で一旗あげてみないぃ? なんてw」


「ひ、人の命をなんだと思ってやがる!」


 返事の代わりに、どでかいハンマーが振り下ろされる。


 ドシャアッ!


 咄嗟に飛び下がった俺の股の間にめり込み、粉砕されたコンクリートと砂埃が舞う。


「またかわすしぃ。まじうぜー」


「な、な、なんですか、どっから出したんすか、そのハンマー」


「決まってるし。しぃちゃんの転生七つ道具、転生ハンマー産血直葬さんちちょくそーで転生させてやるし」


「おまわりさぁん! 助けてえええ! いかれた殺人お姉ちゃんがいるよおおお!」


「無駄なんだよなあ!」


 周りを見ると、誰もかれも時間が止まったように動かないでいる。


 ただ一人動くしぃちゃんが、200メートルのスタートみたいに四つ這いに構えてから、一気に突進してくる。振りかぶった馬鹿でかいハンマーには、ゴツいトゲトゲがついている!


 さらに、しいちゃんの佐◯の制服の胸元がだらしなく開いていた。はち切れんばかりの小麦色、その膨らみに蝶のタトゥーに目が奪われた!


 いや、そうじゃねえ!

 

 我に帰った俺の顔面に、ハンマーのゴツいトゲトゲが迫ってくる!


 しまった! 


 俺は上体を大きく逸らし、ハンマーをかわす。


 そう、俺は小さい頃から逃げ足の速さだけは金メダル級! 俺とやるドッジボールは、三日三晩の長期戦を覚悟するんだな!


 しかしその俺の腕を、しぃちゃんの派手なネイルをした手が掴んだ。


「えへへ、捕まえた!」


「しまった!」


「もうハンマーでぶっ叩くのもめんどいしぃ、このまま異世界、連れてくわあ」


 しぃちゃんの横に謎空間に通じる穴が現れる。


 いや、絶対やばいって! 


 逃げようとするが、見た目に反して怪力しぃちゃんの手は離れない。


「はぁい。一名様、ご案なーい」


 言うと同時に、しぃちゃんは俺の手を引いて穴に飛び込んだ。

 

 視界が歪む。


 謎空間は渦巻状に捻じ曲がってて、蛇に丸呑みにされたみたいで気持ち悪い。


 引っ張られる感じがして足を見ると、スパゲッティみたいに遥か先まで伸びていた!


 どうなってんのこれ! やばいんじゃないのこれ!


「大丈夫、心配すんなし」


 しぃちゃんが笑う。


「どのへんが大丈夫なんだよ! それになんかくせぇ! 生暖けぇ!?」


 これが異世界の臭いかあ?


「何言ってんのかわかんないし! ほら、つくよ!」


 謎空間を抜けて、最初に見えたのは青い空だった。


 見渡す限りに広がる草原、みたことものない狐とリスの中間みたいな小動物がびっくりして逃げていく。

 


 空の向こうには遺跡の残骸みたいなのが浮いてるし、太陽が東と西に一つずつ見えた。

 

 こ、これは!


 俺にだって、異世界転生に憧れたことはある。


 だがもちろん創作物の中の話で、まさか実際に生きて、この目で異世界を見るだなんて!

 

 俺は感動のあまり立ち上がった。いや、しようとした。


 けど次の瞬間、俺の体が崩れ落ちる。


 足元を見て俺は愕然とする。


 ってか、足元がない! 地面に広がっているのは謎のゲル状! まさか、これって!


「俺の体かよおおお! 溶けてるじゃんかあああ!」


「おいおい、落ち着けよ」


「落ち着けるかあああ! お前、大丈夫心配すんなって言ってたよなああ! どう言うことだこれええええ!」


 ゲル状になった俺を見て、しぃちゃんの顔にはてな?が浮かんだ。


「なんかボコボコ言ってるけど、何言ってるかわかんね」


「死ねこのア◯ズレがあああああ!」


 聞こえないとわかってここぞとばかりに俺は罵詈雑言を繰り返す。


「生身で転移すると、耐えきれずに溶けちゃうんだねー。勉強なったし」


 ぼこぼこぉ! ぶくぶくぶく!!!


「あっはっは! それでなんで生きてんのお前! まじウケるし!」


 くそお! なんか言い返してやりたいけど、スライム状の体じゃあ人語が発声できねええ!


 俺は強くイメージする。この無責任適当アホギャルをギャフンと言わせるべく、人間の体がほしい!


 すると体がぼこぼこと泡立ち、ゆっくりと視線が高くなる。気がつけば俺はしぃちゃんより頭一つ大きい人間形態になっていた!


「お、やった! 人間になれた!」


「おおマジィ? やるじゃん」


「やるじゃん! じゃねえ! 人の体をこんなことにしやがって!」


「んだよぉ、そんな怒ることぉ? むしろなんか便利そうじゃないすか、その体ぁ?」


「じゃあてめえがゲル状になってみっかぁ?」


「ぜってえやだしぃw まあ、せっかく転生したんだ。王様にあってけよ」


 しぃちゃんが親指で背後をさす。遥か先に、城下町とネズミーランドみたいなお城が見える。


「王さまぁ? 会ったらどうなんだ?」


「そりゃ転生者のやることはひとつっしょ」


 しぃちゃんがいたずらに笑う。


「魔王退治」


「はぁ? 俺がぁ? やだよなんでそんなこと」


「褒美は望むままって言ってた。あんた、なんかほしーもんないの?」


 え、ほしいものか、急に言われてもな。


 お金に、ゲームに、いやどれもぱっとしないな。腕を組もうとして、溶けてなくなってることに気がつく。


 おっといけねえ、人間形態は気を張ってないとすぐ溶けちゃう…


「ってこれだあああ! なんとかして人間に戻れないのか!?」


「うちに聞かれてもねえ」


 こいつ、適当な上になんにも知らねえなあ!!


 しかし、なんか人間に戻れる魔法の国宝的何かがあるかもしんねえな。


 まあそもそも魔王倒せんのかって話だけど、転生はガチだったんだ。そしたら、俺にも何か秘めたる力があったりするんじゃねえかな、たぶん。


「んじゃ、王様のとこ、行くかー」


「決まり!」


 しぃちゃんがニッと笑う。はっきり言ってくそ可愛いが、もう騙されねえからな!


◇◇◇◇◇


ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


毎朝更新いたします。


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