ポゼスペル~落ちこぼれの学生は最強魔法使いに憑依され覚醒する~

@sousura

プロローグ 世界を渡る魔法使い

「俺はもう死ぬのか……」


 俺は自分が死ぬまで間もないことを悟った。


 この60年間、俺は全てを失ってから何もする気力が無くただただ虚無な生活を送っていた。そんな俺に突然発症した謎の大病に苦しんでいた時、光のように走馬灯が流れてきた。


 2004年、日本は滅んだ。

人を襲う怪物、「ファングリム」によって。


 俺の名は操世磨人。魔法使いだった。これまでその力を使ってヤツラを倒し、人々の希望となり、救ってきた。


 魔法使いだった以前の俺は無敵だった。強敵もいたが負けることはなく、少なくとも俺の目の前で人が死ぬことはなかった。

だが、60年前の1944年、あることが起き、俺の中から魔力が消えた。


 ヤツラは魔法でしか倒せない。故に人間の兵器も効かない。ヤツラの唯一の天敵である俺が戦えなくなり、人間はなす術もなく蹂躙された……


 俺が戦えなくなったせいで、俺の大切な人は皆ヤツラに惨殺されてしまった。


 もし、俺がまだ戦えていたら…みんなの希望であり続けられたら……!


「チクショウめ……」


 俺に後悔の波が押し寄せ、自責の念に押し潰されそうになってしまった。

俺はそんな感情を誤魔化そうと俺が魔力を失わずに戦い続けられていたときの妄想をした。


「あの時、こうしていれば結果は違ったのかもな……」


 だが、そんなことを考えたってなにも変わらない。日本はもう存在しないのだ。


「クソ……これ考えるの何回目だよ……」


 俺はさっきの一連の流れを60年前のあの日から何十とやっていた。後悔して、都合のいい妄想をして、我に返るの繰り返し。


 日本を滅亡させてしまった責任は全て、ファングリムと戦えなくなった俺にある。


 そんな罪悪感から生きるのが辛くなり、死のうとしたこともある。だが、この苦しく、虚無な時間は日本を救えなかった俺への罰……懲役刑のようなものだ。そう思い、死ぬことが出来なかった。

 

 そして走馬灯を見終えた瞬間、段々と俺の意識が薄れてきた。


 あぁ、これでようやく死んで刑期を終え、楽になれるんだな……。

 

 そう思いながら、俺は死んだ……。




 はずだった。


 


 

 



「……ハッ!?」


 意識が戻った。


「え……俺、死んだはずじゃ……」


 いや、俺は生きている。その証拠に手足の感覚がはっきりとある。


 状況を整理するためとりあえず深呼吸をしようと思ったが、息ができない。それに、耳のそばで何かパチパチと音がしている。正直怖い。


 そして目を開けたとき、俺は思い知った。


「ここは炎の中だ!!あ、熱いッ!」


 状況を理解すると共に身体中に形容しがたい痛みが走る。

 なぜ目を閉じている間は焼かれていることに気づかなかったのか謎だが、とりあえず痛みで自分が生きていることが嫌でも実感できた。


「熱い…焼け死ぬ!」


 ここままでは死ぬと焦り、俺は思った。


「魔法が……使えたら!」


 魔法さえ使えれば、この炎を消すことなど容易い。

せっかく生き返ったのにすぐ死ぬなんてゴメンだ。生き返る前は死にたがっていたのになぜそう思ったのだろうか。


 だがそんなこと考えている暇はない。そう思いダメ元で水属性の魔法の名前を叫んでみた。


「ウォーラッ!」


 すると、奇跡が起きた。

 目の前に洪水が現れたのだ。  


 圧倒的な水の力によって炎が一瞬で消火され、俺は苦しみから解放された。


 ホッと息をつき体を見てみると、意外にも火傷は殆どしていなかった。しかし、何か違和感がある。


「これは!?」


 俺は違和感に気づいた。


 骨が透けていた体がスタイリッシュな筋肉質になり、老いてシワだらけになったはずの体が若々しさを取り戻していたのだ。それにとんでもない程の魔力とパワーが沸々と漲ってくる。


 間違いない。これは魔法使いだった全盛期である10代頃の体だ。


「ということは、まさか、若返ったのか!?」


 何故生きているのか、何故若返ったのかじっくり考えたいところだが、とりあえず一旦休んで落ち着くことにした。


 生きていることにも驚きだが、何よりも魔法が使えた驚きが勝った。なにせ60年は使っていなかったのだ。それに俺はもう死ぬのが怖くなかった。戦えない俺が生きていても何の意味もないから。


 いや待てよ?今は違うじゃないか。何故か分からないが今の俺は全盛期の力を取り戻し魔法が使える。


 つまり人を救える。また戦うことができる。

人の希望になることこそ俺の存在理由だ。


 そう思うと生きたいという気持ちが強まってきた。


 俺が炎に包まれていた時に生きたいと思ったのは直感的に魔力が復活したことを理解していたからだったのか。


 前向きな考えが出来そうになったとき、俺の体に強い衝撃が走り、吹っ飛ばされ岩肌に深くめり込んだ。



「う……何が起こった?」


 顔を上げると何かが俺の目の前にいた。この世のものとは思えない異質なオーラを纏っている化物が。


 ヤツと対峙した瞬間、俺は悟った。


 コイツには誰も勝てない。絶対に。

全盛期の力を取り戻し、絶対的な威力の魔法が使えるようになった俺でもだ。


 始めて幽霊を見たときとは比べ物にならない恐怖が俺を襲った。

 今すぐにでも逃げ出したかったが、もしコイツが人里に向かったら?そう考えると逃げるわけにはい

かなくなった。


「貴様は、俺がここで……!」


 俺は火属性の魔法「ファローガ」を放った。コイツの火力は分厚い鋼鉄をも紙切れのように燃やせる程だ。2つの爆炎が交錯しながらヤツへと襲いかかる。


 しかし俺の魔法はヤツに届く前に掻き消された。


「バカな!?火が効かないのなら!」


 火に耐性があるということはヤツは水に関係する魔物である可能性が高い。

 

俺はさっき洪水を起こした強力な水属性の魔法「ウォーラ」を撃とうとした。


 が、出なかった。


 魔力はまだあるはずだと思ったが気づいた。俺は60年ぶりに魔法を使ったので体が慣れておらず、一度の魔法で魔力を使い果たしてしまったのだ。


「ウッ!?手……手が!」


 気づくと、両腕が落とされていた。

ヤツは少しも動いていない。


「グァァァァァアアアッ!」


 俺は痛みにのたうち回った。まずい……死ぬ!


 そして、ヤツが俺を殺そうと動き出した。


 ヤツが1歩、2歩、3歩と歩くたびに、周囲の空気が歪んでいく。


 こんなところで死んでたまるか……!せっかく……魔力が復活したのに……!

せっかく……また人々の希望になれると思ったのに!


 そう思いながら俺が最後に見たのは、鮮血を撒き散らしながら倒れゆく自分の体だった……

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