第8話「help(助ける)」

砂浜で1匹の亀が3人の子供に囲まれて、木の棒などで叩かれ虐められていた。

その光景を一人の青年が目撃し子供達に—————。


青年「こら〜〜っ!!そこでなんばしょっとね!?」


と大声で怒鳴った。青年の声にびっくりした子供達は持っていた木の棒をその場で捨て亀から離れ村の方へ走って行く。青年は亀に近づき甲羅にかかった砂を払い落とし波打ち際へ亀を置いて手を振った。


青年「最近の子供のはぁ、ダメたいね。す〜ぐに弱か物いじめしょるばい。……ほら、今のうちに海に帰りなっせ」


青年に海へ帰るよう言われたが、亀は一歩も動こうとしなかった。それどころか青年に向かって—————。


亀「先ほどは助けて頂きありがとうございます。なんとお礼していいものか」


青年「お礼なんていらんよ」


亀「そう言うわけにはいきません!またいつどこで会えるかわかりません。それに人、いや亀の“善“は受け取って損はないと思いますよ(笑)」


青年「どういうこつなんやっちゃね?」


疑問を抱く青年の言葉は亀に届かなかった。それどころか強引に青年に自分背中(甲羅)に乗るよう言い、青年を連れて海の中へと潜って行く。


海の中は不思議と苦しくない。数メートル潜った先に城が建っていた。青年は目を輝かせ亀に尋ねる。


青年「海の底にこんな立派な城があっとね」


亀「はい。まだ建設されて日が浅いんです。こちらの城は“竜宮城2号店“」


青年「2号店?」


亀「えぇ。あれ?ご存知ないですか?有名なんですけどねぇ」


青年「初めて聞いたばい」


亀「そうですか。そうですか。でしたら【フルコース】で今宵は楽しんで頂くと致しましょう♫」


亀は青年を連れて竜宮城2号店の中へ入って行く。何も分からず勝手に決められた青年は豪華絢爛に飾られたな部屋へ案内された。そこで待つは彩り豊かな料理と綺麗に着飾る女装した魚の被り物を被った二人の男性だった。名はブリオとカレイ。

二人の息のあったダンスパフォーマンスは素晴らしかったし、料理も普段食べている質素な料理に比べて数倍も美味しかった。


亀「恩人様、そろそろ宴もたけなわでございます。これを土産にお持ち帰り下さい」


亀から手渡されたのは小さな葛籠つづらだった。


亀「この葛籠、陸へ戻っても決して開けないで下さい。開けたら最期……貴方様は——————ですから」


最後の方はよく聞き取れず、聞き返しても亀は返してくれなかった。

一体亀はなんと言ったのだろう。そして何故悲しげな笑み見せたのか、陸に戻り家に帰って考えても分からなかった。

だから、青年は亀の言うこと聞かず葛籠を開けてしまった。

その中は………何千万という金額の請求書だったという。


(終)🐢🏯

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る