第11話:現れた飛飛。
鏡は庭の置石に打ち砕かれて粉微塵に飛散した。
もう二度と修復はできない。
(
こうするしか・・・)
割れた鏡を掃除したあと、愛彦は、おそるおそる店の中を覗いてみた。
思った通り飛飛の姿はなかった。
(消えたんだ・・・)
(ごめんよ飛飛・・・ こうしないと僕の体はきっと持たない・・・)
愛彦はふと思った。
(鏡の精ってなにを食べて生きてるんだろう)
(そう言えば飛飛が何か食べ物を口にしてるところを見たことがなかった・・・
彼女は仙女だとも言った。
人間とは違う、仙女ってなにも食べなくても生きていけるのか?・・・)
(待てよ・・・ もしかして人の精気を吸って生きているとか・・・)
思い当たる節はあった。
自分が飛飛と寝るたびにめくるめく快感とうらはらに生命力を少しずつ
失っていく気がした。
飛飛とエッチしない日は体力は多少回復する・・・ だがそういうことの繰り返しだったように思った。
(もしそうだとしたら飛飛が消えてくれてよかったのかもしれない)
自分に封印する力があったら鏡の世界にもどしてやることが出来たのに・・・。
鏡を割ってしまった後で愛彦は良心の呵責で少しだけ後悔した。
鏡が割れて以来、飛飛は一度も現れていない。
これで終わったんだと愛彦は思った。
愛彦にとっては、複雑な思いだった・・・飛飛がいなくなったことで愛彦の
心は寂しさを持て余して、時々、気がぬけたみたいに放心状態になることがあった。
愛した女は男の精気を吸い取る魔性の女だったのか?
今夜は飛飛が消えてはじめての満月だった。
自分の部屋で過ごしていたその夜、愛彦の体は、いなくなった飛飛を求めた。
男も女も、なぜか満月の夜には体が燃える・・・。
自分の体も今夜の満月の魔力に犯されてるんだろうか・・・愛彦はそう思った。
(鏡を割るんじゃなかった・・・)
(しかたがない、飛飛は永遠に消えてしまったんだから・・・)
(可哀想なことをしたかな)
(飛飛・・・君が恋しいよ・・・君を抱きたい・・・)
「飛飛・・・ごめんよ・・・」
「鏡を割るなんて、なんてバカなことをしたんだ、俺は・・・」
「愛してたんだ・・・飛飛・・・」
「可愛かったのに・・君は俺にとって最高の女性だったよ」
愛彦はボソッとつぶやいた。
「あら、ありがとうヨシヒコ・・・」
愛彦の耳元で声がした。
その声を聞いて愛彦は飛び上がった。
聞き覚えのある声がすぐ後ろからした・・・。
つづく。
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