幼なじみの彼女
みかんの実
第1話 俺の彼女
「もう、帰るじかんだ」
「ほんとだ、早いね」
「いちご、壱斗半ちゃんとまだ一緒いたいのに……」
「いちごちゃん。家おとなりなんだから、すぐ会えるじゃん」
「ちがうの!いちごはずっと一緒いたいのー!!」
「そっか。僕もいちごちゃんと一緒がいいけど」
「本当に?じゃぁ、いちごたち大きくなったら結婚しましょう!」
「うん。いーよ」
「壱斗ちゃんやくそく!ゆび切りね!」
男の子は女の子の指を、女の子は男の子の指を絡めた。
オレンジ色に染まりはじめた公園で、交わされた小さな2人の"やくそく"。
*
残暑が残りわずかといったところだろうか。
夏の季節が終わりを告げようとしてる季節。
せっかくの日曜なのに、俺は通学路を1人で歩いている。
今日は俺の高校の文化祭。と、いってもたいした事やる訳じゃないが、学校行事ってのは本当に面倒だ。
アイツには、文化祭の話を全くしなかった。
話題に出したら絶対来るだろうし、来るなんて騒ぎ出したら面倒だし。
でも、何故だか今日は朝から嫌な予感はしていたんだ。
「壱斗ちゃん!えへへ。友達と来ちゃった!」
この聞き覚えのある声。
はッと後ろを振り返ると、そこには、エヘヘと笑う苺とその友達らしき女の子の姿がある。
…マジかよ。
予感は見事に的中し、俺の口からは大きな息が漏れた。
「えー?壱斗くんの彼女?」
「うわっ、お前そういうの言って紹介しろよ」
クラスの奴等が騒ぎだす。
面倒くせ。そう思いながら、苺達を廊下に連れ出した。
「苺ぉ……お前、なんで来たんだよ?」
まぁ来るなとも言ってないけど。苺ならボンヤリして気付かないと思ったのに。
「えへへ、実はぁ…」
苺は両手を合わせたところで、
「苺ちゃん!来てくれたんだ」
後ろから悠太が寄って、きて苺に声をかける。
「あ、悠太さん。連絡くれてありがとうです!」
「だって壱斗の奴、絶対誘わなそーだって思ったからさ」
「壱斗ちゃん、そういうの絶対教えてくれないんです」
「分かる!そういう奴だよなぁ。苺ちゃん壱斗の彼女なのにさー」
そう言って、悠太は苺とケラケラと笑い合う。
……犯人はコイツか。
つうか、この2人繋がってんのかよ。
前に一緒にいるところを悠太に見られ、仕方なく紹介したことがあったのだけど。
いつの間に連絡を取り合っていたのか…。
苺は俺の可愛い彼女ではあるのだが、正直ウザい時のが多い。
もちろん好きだし、大切だと思っている。
けど、どうも苺がいると気分が落ち着かないのだ。
「へぇーあんたが壱斗ちゃん?」
「はい?」
苺の隣にいる女の子が俺にギロリと目を向ける。
結構な美人だが、なんか俺に挑戦的な感じだ。
「壱斗ちゃん、友達の由香ちゃんだよ!」
「あ…あぁ、よろしく」
ルンルンな苺に対し、押されぎみに軽く会釈をする。
なんか、ちょっと苦手なタイプだな……。
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