幼なじみの彼女

みかんの実

第1話 俺の彼女



「もう、帰るじかんだ」

「ほんとだ、早いね」

「いちご、壱斗半ちゃんとまだ一緒いたいのに……」

「いちごちゃん。家おとなりなんだから、すぐ会えるじゃん」

「ちがうの!いちごはずっと一緒いたいのー!!」

「そっか。僕もいちごちゃんと一緒がいいけど」

「本当に?じゃぁ、いちごたち大きくなったら結婚しましょう!」

「うん。いーよ」

「壱斗ちゃんやくそく!ゆび切りね!」


男の子は女の子の指を、女の子は男の子の指を絡めた。

オレンジ色に染まりはじめた公園で、交わされた小さな2人の"やくそく"。



残暑が残りわずかといったところだろうか。

夏の季節が終わりを告げようとしてる季節。

せっかくの日曜なのに、俺は通学路を1人で歩いている。


今日は俺の高校の文化祭。と、いってもたいした事やる訳じゃないが、学校行事ってのは本当に面倒だ。


アイツには、文化祭の話を全くしなかった。

話題に出したら絶対来るだろうし、来るなんて騒ぎ出したら面倒だし。

でも、何故だか今日は朝から嫌な予感はしていたんだ。


「壱斗ちゃん!えへへ。友達と来ちゃった!」


この聞き覚えのある声。

はッと後ろを振り返ると、そこには、エヘヘと笑う苺とその友達らしき女の子の姿がある。

…マジかよ。

予感は見事に的中し、俺の口からは大きな息が漏れた。


「えー?壱斗くんの彼女?」

「うわっ、お前そういうの言って紹介しろよ」


クラスの奴等が騒ぎだす。

面倒くせ。そう思いながら、苺達を廊下に連れ出した。


「苺ぉ……お前、なんで来たんだよ?」


まぁ来るなとも言ってないけど。苺ならボンヤリして気付かないと思ったのに。


「えへへ、実はぁ…」


苺は両手を合わせたところで、


「苺ちゃん!来てくれたんだ」


後ろから悠太が寄って、きて苺に声をかける。


「あ、悠太さん。連絡くれてありがとうです!」

「だって壱斗の奴、絶対誘わなそーだって思ったからさ」

「壱斗ちゃん、そういうの絶対教えてくれないんです」

「分かる!そういう奴だよなぁ。苺ちゃん壱斗の彼女なのにさー」


そう言って、悠太は苺とケラケラと笑い合う。

……犯人はコイツか。

つうか、この2人繋がってんのかよ。


前に一緒にいるところを悠太に見られ、仕方なく紹介したことがあったのだけど。

いつの間に連絡を取り合っていたのか…。


苺は俺の可愛い彼女ではあるのだが、正直ウザい時のが多い。

もちろん好きだし、大切だと思っている。

けど、どうも苺がいると気分が落ち着かないのだ。


「へぇーあんたが壱斗ちゃん?」

「はい?」


苺の隣にいる女の子が俺にギロリと目を向ける。

結構な美人だが、なんか俺に挑戦的な感じだ。


「壱斗ちゃん、友達の由香ちゃんだよ!」

「あ…あぁ、よろしく」


ルンルンな苺に対し、押されぎみに軽く会釈をする。

なんか、ちょっと苦手なタイプだな……。


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