第10話 大使館 Botschaft

アーモニア帝国、帝都・ベーラン市

テア・ゲルデン区内・外国大使館地区

ブロテン連合国 ユニオン大使館

新皇帝歴1年4月21日

午後15時45分頃


サー・ジョルシェア・ホエール参事官が自分の執務室の大きな窓からベーラン市を眺めていた。着任してからまだ1年も経っておらず、情報機関出身者らしく、常に最新の情報、噂レベルのものまで、集めるようにしていた。


「サー・ジョルシェア・・・本日判明した、帝国内で我々の良き友人であった、アット・ヴァン・ヘイデンバルグ侯爵の殺害は粛清であると情報部の結論です。」


執務室のドアの横に立っていた書記官が報告した。


「そうであろうな・・・フラミンゲー君。」


28歳のエイアン・フラミンゲー書記官はホエール参事官同様、連合国ユニオン情報機関S・I・Sの出身者で元連合国ユニオンアーミー少佐メジャーだった。彼は基本の6つ(※)の属性魔法の内の3つ(※※)の属性の戦闘用魔法を使える凄腕の戦闘バトル魔導士ウィザードで大使館内での肩書は書記官だったが、実際は情報収集・スパイ活動がメインの業務だった。


「ヴァーゼントール子爵も粛清の対象になると情報部が見ています。」


「じゃ・・近日中に消されるだろう。」


「はい、そうなると思います。」


「これで先代皇帝一族は謀殺されたことは確定だね。」


「はい・・公式発表の痛ましい新型魔法飛行船事故ではないことはまず間違いない。」


「新皇帝が即位前、彼は伝道師と称した時、彼の指導の下で改革を行ったオストロニア地方に何かあった証拠はまだ見つからないか?」


「断片的なものしかありません・・・そのすべてはヘイデンバルグ侯爵から提供されていた。」


「あのゴブレス辺境伯はかなりのやり手だろう。」


「情報統制及び隠蔽は見事なものです。」


「新種の大型魔法の使用を疑うぐらいな。」


「そうです・・・情報部もそう見ています。」


「わが国の情報部は優秀だと思うのだが、帝国の隠蔽技術はまだ破ることができないのは残念。」


「そうです・・それと新皇帝の異常なカリスマ性は何かの魔法でしょうか?」


「わからないな。」


「サー・ジョルシェア・・・正直に意見を述べてよろしいでしょうか。」


「うむ、述べろ。」


「情報部の分析では帝国に内乱が起きて、混乱に落ちると見ていますが、私は違います。」


「なるほど・・・続けたまえ、フラミンゲー君。」


「種族浄化を基本とする大規模な粛清が始まる。」


「うむ・・・その根拠は?」


「ヘイデンバルグ侯爵から提供された断片的な情報では種族の強制移住を辛うじて示すものがありました。」


「なるほど・・・証拠として弱いな・・・そしてまだ君の推測の域だね。」


「証拠を必ず、掴みます。」


「わかった・・・以前、植民地での君の活躍や判断力は情報部の分析結果と結論より遥かに優れていたのは知っている。」


「ありがとうございます。」


「我が国の友人の解剖結果と現地警察資料から情報を集めてくれたまえ。」


「既に動いています・・・夕方17時過ぎに担当した刑事と検視官に接触する予定です。」


「なるほど・・・流石フラミンゲー君、仕事が早い。」


「ええ・・事件は帝国の秘密警察の管轄になり、既に解決済と結論を出されている。」


「公式発表だね・・・」


「初動捜査した彼らは消される前に真実を暴きたいと思っています。」


「頼むぞ、フラミンゲー君。」


「お任せください、サー・ジョルシェア。」


若い書記官は参事官の執務室から急ぎ足で出ていった。






【脚注】


※この世界の基本の6つの属性魔法

【火・風・水・土・光・闇】


※※エイアン・フラミンゲーが使える攻撃魔法は以下の属性のみ

【火・土・光】


6つの基本属性以外、誰でも使用可能な生活系、希少な毒系、選別不可な無属性、長距離転移用の特殊系、複数系統が融合した複合系などがあります。





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