第5話 検視官 Coroner
アーモニア帝国、帝都・ベーラン
タンペルホーフェ=シェーネバルク区内
ベーラン
新皇帝歴1年4月21日
午前10時25分頃
検視官室に入った二人を待っていたのはすらっと身長が高く、華奢な体をした女性だった。彼女の名はリベッシュ・マウンバットン、階級はウエダー同様、
彼女の母親は300歳を超えた
「やっと来たか・・・30分前に侯爵の
リベッシュは二人を見て、不機嫌に呟いた。
「お待たせして申し訳ない、マウンバットン
マッシュミリエンは敢えて、ウエダーに外で待たされたことを言わなかった。
彼はそれを言い訳と受け取られて、余計に彼女が不機嫌になると思った。
シュミーツは何か言うようと思ったが、マッシュミリエンは片手で制止した。
「相変わらずですね、リッヘ君・・・心のこもってない謝罪は得意だもんね。」
マッシュミリエンにはこの言葉が心に刺さった。4年間同棲し、結婚の約束をしたのに、同僚たちとの飲み会で若い
「リベッシュ・・・本当に申し訳ございません・・・」
「いつから私を呼び捨てにしていいと許可した?」
「失礼しました・・・」
「いいのよ・・もう・・・どうせ、ヘルミー(ヘルミニアの愛称)が意地悪して、外で待たせたでしょう・・・あの子には後できつく言わないと・・・」
「ああ・・はい。」
「では、早速説明をするね。」
リベッシュは二人を解剖台へ来るように促し、
侯爵の死体から焼けた肉の臭いが漂った。145歳の老人だったが、見た目は70歳にしか見えず、筋肉質な体をしていた。侯爵の胸、心臓の位置辺りに大きな火傷があった。雷の魔法一撃で即死だった。
大きな解剖用の魔法ルーペで火傷を拡大して、二人の捜査官に見せた。
「一見、普通の雷の魔法に見えるわ・・初歩的な攻撃用の
「そう見えるが、そうじゃないってこと?」
「はい・・その通り、流石リッヘ君。
「攻撃者の死体や血痕などの痕跡がないってことかな?」
「鑑識官のエンマーちゃんは何の痕跡も見つけてないよ・・・そして強盗団の構成員は侯爵の目の前まで近づくと思えない。」
「確かに・・・侯爵はこの国屈指の
「強盗じゃない、何者か侯爵に近づいて、攻撃を放ったと考えられるわ・・・但し、そいつは無事で済まされないのよ。」
「確かに・・・でも痕跡も残ってないでしょう?」
「はい・・・それと物理的な痕跡だけじゃなくて、魔法の痕跡も残ってないのよ。」
「魔法攻撃ではないってこと?」
「そうとしか考えられないのよ・・・魔法なしに雷の威力を再現できるのは難しい・・・最近は魔法工学と最新の魔法科学なら・・・でもまだそこまで至ってないの。」
「電気ってやつかな?」
「そうよ・・・しかも小型化し、携帯できるものじゃないと・・・知っての通り、電気を蓄電できるバッテリーの威力が弱いわ。」
「そうか・・・でも何故上層部は人外の強盗団の仕業と発表したのか?」
「あり得ない仮説より、現実味のある定説を選んだわ・・・若しくは責任を押し付けるためかも知れない。」
「襲撃したのは
「いいえ、女性たちの死体には獣人の精液がたっぷりかけられていた・・・
「侯爵の息子たちは?」
「同じ攻撃でやられているの。」
リベッシュの説明を聞いて、マッシュミリエンは思考をフル回転させていた、論理的な説明が見つからないのに、上層部は人外の帝国民に対して風当りが強くなる発表をしたからだ。
彼女は
解剖台から離れるように二人を招いた。
「報告書にまとめるでしょう?」
「はい、そして今回の事件が
「ラインヘルスト・ヘイドリヘ
「はい・・・」
「何を考えているのよ・・・上の人たち・・・頭痛いわ・・・」
「はい・・・でも残念ながら上の命令には逆らえない。」
リベッシュは帽子、マスクを取り、まとめていた長い銀髪が自由になった。
彼女は
「リッヘ君、ちょっと話があるの・・・」
「では、どうぞ。」
「二人きりで・・・」
リベッシュは片手で髪を上げた。赤面していた。
「ちょっと急用を思い出した・・・退室します、リッヘ
「おう・・・いいぞ。」
シュミーツはその場の空気を読んで、嘘の急用で二人きりにした。
「リッヘ君・・・」
「リベッシュ・・・」
赤面していた美しい彼女がマッシュミリエンを真っ直ぐ見つめた。
「大事な話がある・・・アット・ヴァン・ヘイデンバルグ侯爵が私の孫甥なの・・・」
「孫甥?」
「私の母上の一番の姉君の曾孫なの・・・」
リベッシュの母親のレスレイ・マウンバットン男爵未亡人はシュタイナールの一族の末子の4人姉弟だった。
シュタイナール一族の長女、イリビーナ・ヘイデンバルグ侯爵夫人は生きていれば600歳だったが、数年前に亡くなったと聞いた。唯一の夫は人族のヘイデンバルグ侯爵の祖父だった。
「リベッシュは確かに今年で53歳だっけ?」
「うん・・知ってるでしょう・・」
マッシュミリエンはリベッシュを見た、彼女の外見は二十歳ほどの女性にしか見えなかった。そして思い出した、自分がずっと年下だったことを。
「それで何かあった?」
「ヘイデンバルグ侯爵の右目は精巧に作られた
「はい・・・」
「その義眼は私に反応したのよ・・・」
「ええ?・・・どういうこと?」
リベッシュは白衣のポケットからガーゼに包まった
彼女が手をかざしただけでその
そして
映像の中には文字があった、マッシュミリエンがよく知っている文字だった。
「ねえ、マッシュミ(マッシュミリエンの愛称)、これはヒノモト列島皇国の文字でしょう?」
「ええ、間違いなくヒノモト列島皇国の文字だよ・・・ハン帝国から取り組んだハン字とヒノモトの平民がよく使うヒトカナ字だ・・・」
「マッシュミ・・・何か書いてあるの?」
「リベ(リベッシュの愛称)・・・恐ろしい真実だよ・・」
【アーモニア・帝国・ノ・新皇帝・ハ・悪・ノ・異世界人・デ・アル】
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