#壊れた地球の歩き方 【コミカライズ全3巻発売中!】

ヤマモトユウスケ

第一章【古都奪還戦争編/妬まれて追放されたけど、実は『複製』スキルで戦闘から生産までなんでもこなす万能ワーカーでした。今さら帰ってこいと言われてももう遅いです。】

1 追放



 文明が崩壊して二年が経った。

 僕は大学三年生になった。



 ●



「イコマ、おまえは追放だ」


 狩猟班リーダーのイケメンチャラ男、レイジが冷たく言い捨てた。

 僕も「いつか追い出されちゃうかもなー」と思っていたけれど、まさか本当に言われるとは思っていなかった。

 一応、


「マジで言ってる?」


 と聞き返して確認をしておく。

 レイジは不快そうに眉をひそめて、大きく頷いた。


「マジだ。おまえは村に不必要――いや、ちゃんと言おうか。

 おまえは有害なんだよ、この村にとって。

 カグヤに取り入って上手いことやってるつもりかもしれないが、おれにはちゃんとわかってるからな。

 おまえのスキルはゴミだ」


 思わず空を仰いでしまった。

 コイツ、マジか。

 A大学集落――A大村の入り口の広場で、周囲にはたくさんの学生がいる。

 仕事中に通りかかり、僕らを見て足を止めた人たちが、ざわざわと喧騒を生み始めていた。

 狩猟班リーダー、A大村トップハンターのレイジと、器用貧乏生産職お手伝いの僕が向かい合うという構図は、それなりにセンセーショナルだろう。

 レイジが僕を嫌っているのは、みんな知っていたけど――まさか、追い出すほどだとは。

 しかも理由が、僕とカグヤ先輩の仲が良いからだとは。

 どうしようもないな、コイツ。


「あー、そう。でもいいの?

 僕の『複製:B』スキルがないと困ることに――」

「おれには通じねえ、おれにはわかってるって言ったろうが。

 おまえの御託はもういいんだよ。

 劣化コピーしか能のないパクリ野郎がごちゃごちゃ抜かすな」


 聞く耳持たず、だった。

 レイジは僕に指を突きつけて、


「明日までに出ていけ。二度とカグヤに近づくんじゃねえぞ。

 出ていかねえなら力づくで叩き出すからな、このパクリ野郎」


 そう吐き捨てたのである。

 レイジはカグヤ先輩を狙っているから、親しい僕を排除したいのだろう。

 僕としても正直、もうそろそろレイジたちにうんざりしていたので、売り言葉に買い言葉みたいな感じになってしまった。


「わかったよ。出ていけばいいんでしょ?」


 そういうわけで、僕は村を追放されたのである。



 ●



 二年前、地球がぶっ壊れた。

 最初に発生したのは地殻変動を含む天変地異。

 大地震が発生し、世界各地の地形ががらりと変わった。

 旧来の道の大半が分断され、街中にも巨大な断層が絶壁のようにせり上がった。

 人類の一割弱が亡くなった大地震のあとにやってきたのは、激しい稲光を伴う大嵐。

 川という川が氾濫し、海という海が津波を海岸沿いにぶつける日々が続いた。

 この時点で、文明は半ば崩壊していたと思う。

 けれど、真に恐ろしい滅びはそれからだった。


 ――モンスターの出現。


 超常の力スキルを持つモンスターたちが、世界各地に湧いて出た。文字通り、どこからともなく。

 やつらは人類の兵器をものともせず、国家という枠組み、人間の持つワールドワイドな社会性を破壊しつくした。

 特にドラゴン――神話に出てくるような、四足と一対の翼を持つ巨大な怪物はすさまじく、天変地異後で疲弊し、混乱しきった人類の軍隊で太刀打ちできる相手ではなかった。

 大都市圏の大半が竜種の縄張りになってしまい、人類は住む場所を追われた。

 それが二年前。文明が崩壊したときのあらすじ。

 でも、人類はまだ滅んでいない。


 そう、二年前。二年前だ。


 僕ら人類は、まるで天から授けられるかのように、唐突にその力を手に入れた。

 ステータスとスキルを――ゲームや漫画みたいな超常の能力を。


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