第17話 決闘ンゴ
どみん「す、すごい人ンゴ…酔いそう…」
決闘当日、どこからともなく人が群れをなしていた。
家族連れ、商人、冒険者、旅芸人、吟遊詩人、貴族らしい人達。
人混みの中で唯一空いているスペース、オリーブ中央広場呼ばれる歴史的にもかつて豊穣神が眠るとされる由緒正しい広場らしい。
その広場を中心として様々な屋台が展開されている。
食事、宝石、民芸品、服、劇団などなど。
中でも竹籠にたんまりと積まれたンゴが提供したホワイトイーグルの唐揚げは飛ぶように売れている。
竹串に3個刺して銀貨一枚。
さらに竹籠と竹串の販売もしているようで、販売を担当しているオリーブ領の執事さん達はとても忙しそうだ。
好調で良かったと胸を撫で下ろしつつ、自分の装備を確認する。
背中に忍者刀、腰に
足はいつも履いてる足袋と仕込み手裏剣。
服の内側に
この鎖帷子は忍者刀と同じミスリルらしく、固くてしなやかなすぐれもの。
準備はできた、いつでもいける。
そう言い聞かせて中央に足を踏み出す。
イグル「よう、逃げずに来たな?」
緑の道着に身を包んだ、自身に溢れているイケメンが目の間に立ち上がる。
元ダーディラードで、現在ギルドで与えられる最高位ランクのA級であるイグル・シルフィードさんである。
以前見たサーベルと、もう一つすごそうなサーベルの2つを腰に下げている。
イグル「何だかすげぇ武器を手に入れたみたいだが俺ももう一本、このサーベルは『七大災厄』の一柱、竜神王バハムントの竜神鱗を混ぜた神剣『バルムンク』!そして前回テメェに届かなかった『七大災厄』である嫉妬の精霊王による加護が宿る全ての魔を断つ精霊剣『ソウルエンド』。今度こそテメェに勝つ!」
イグルさんが剣を抜いた瞬間、辺りの空気が変わる。
比喩ではなく、本当に重くなった。
イグル「おっといけねぇ、合図はまだだったな。オイ審判官!合図はまだかよ!」
フェルト「まだです。貴方が本気を出すのなら結界を強固に練らなければ観客に被害が及ぶでしょう?おや、どみんくんでしたか?私はA級冒険者であり今回の勝敗の決定や決闘の結界の責任者となる決闘審判官を務めます闇魔法使いの『フェルト・トンム』と申します。いごお見知り置きを…」
どみん「ど、どみんンゴ」
甘いマスクとミステリアスなイケメン漆黒ローブのイケオジだ。
決闘に審判って居るんだね〜。
フェルト「では決闘ルールをご説明します。決闘とはアクシツコレステ法に基づき、
決闘は殺り取りであり命の安否は自己責任。
決闘は降参をした相手にトドメを刺してはいけない。
決闘は第三者が介入してはいけない。
決闘は武器、スキル、魔法の使用を許可する。
決闘の強要は奴隷落ちの大罪である。
決闘の敗者は勝者に1年付き従うものとする。 以上」
どみん「え?[敗者は勝者に1年付き従うものとする]って聞いてないンゴ!」
イグル「んなもん言ってねぇからな!テメェに勝ったらお前の強さの秘密、全て教えてもらうぜ」
どみん「それってズルいンゴ!え、もう了承って事になるンゴ?」
イグル「諦めな」
フェルド「さて、準備も整ったようだし…これよりオリーブ領中央広場にて決闘を執り行う!―――始め!!」
―――SIDE イグル・シルフィード
イグル「先手必勝!行く―――」
ちゅどん!!
イグル「煙!?【風纏Lv10ウインドフォース】!」
小賢しいぜ!だが俺の風で吹き返してやる―――
イグル「ごほっ、ごほっ―――なんだこれ?」
どみん「以前戦った時、その風は周囲の空気を纏っていると気がついたンゴ。だから毒煙玉を放てば勝手に取り込んでくれると信じてたンゴ」
イグル「舐めるな!【風魔法 Lv4サイクロン】」
周囲の空気を巻き上げ煙を天に押し上げた。
イグル「ふん、こんなもん「ザクッ」―――何ッ!?」
何かを踏んだ!
【ウインドフォース】唯一の弱点と言っていい地面らの攻撃!?
もし足場に風を纏ってしまった場合、地面をえぐってしまいバランスが取れなくなるためだ!
前回ここまで見てたのか!?
恐ろしい観察眼!
イグル「小賢しいッ!【風纏Lv8 エアーラン】」
空中を飛べば踏むことはねぇ!
俺に死角はねぇ!
イグル「【風魔法Lv5 エアスラッシュ】」
真空の刃をどみんに向かって飛ばす。
先日のダンジョンではB級モンスターの『ミノタウロス』が一発で首が吹き飛んだ
当然―――避けるな、だが
イグル「避けた先には俺が居るぞ!てやぁあッ!!」
今度は二刀流だ!避けられるはずがない!
ガキン!!
イグル「なっ!?【ウインドフォース】の俺の剣を受け止めた!剣先に風を感じない―――スキルキャンセラー?―――そうかっ!!」
結界外後方に呑気に寝ているでかい猫に目を向ける。
王都の文献の絵本で見たことがあった―――現代より数百年文明が進んでいたとされる要塞都市ムーを滅ぼした要塞落とし…怠惰のネクロパンサー!!
いや、それ以前にこっちは2刀だぞ!
なんでそんな
イグル「スキル無効化、だが武器に接触しなければ無効化は無い!【風纏Lv9 エアコントロール】」
どみん「!?」
驚くだろう?このコマンド【エアコントロール】は周囲の空気を支配する。
俺の動きに合わせて周囲の空気を一緒に動かせば普段より遥かに早く動く―――こんなふうにな!
イグル「そらそらそら!逃げる一方じゃ」
どみん「〈
イグル「ッ――――――」
【エアコントロール】を使ってなんとか霞めたでとどめて避けれた!
コイツ!唐突に刀が出てきたと思ったら突然に自分で横に飛んで剣閃を変えやがった!
飛びこんだ着地を狙おうにも受け身が速すぎて隙がねぇ!
楽しくなってきやがる!
イグル「【風魔法 Lv8エアプレッシ―――】がはっ!?」
なんだ?
目眩?
吐き気?
こんな時に…クソッ―――
立ってられねぇ、吐血!??
どみん「やっと効いてきたンゴ…タフすぎるンゴね」
イグル「て、てめぇ…何を…!まさか、毒?」
どみん「最初の煙玉に虫の麻痺毒、撒菱とこの忍者刀【黒豹丸】にバイオカメレオンの毒袋から抽出した即効性の毒をたっぷり塗ってあったンゴ」
イグル「まだ、まだだ!【風魔法Lv8 エアプレッシャー】!潰れろーーー!!」
この魔法は高圧の空気で押しつぶす、シンプルだが広範囲で強力な魔法だ!
獲った!!
あ゛!?
なんだその縄は!?
こっちに投げた―――
どみん「冠水流縛術〈足縄〉」
足を取られた!
いやっ―――これはもう……
どみん「もう動けないンゴね、コマンドは無駄ンゴよ?その縄にもミィアたん…えと、ねくろはんさぁとかいうのの体毛が使われているンゴ。全身に縄を巻き付けたから自力じゃ無理ンゴよ」
首元に刀を突きつけてきた。
本当にスキルコマンドが使えない。
くそっくそっ、ほどけない!!
ぐあっ!縄の先端の鉤爪が太ももに突き刺さってもがけばもがくほど爪が奥に入ってくる!
あんな簡単に巻き付けて来たくせに?
くそ…くそ、意識が…
どみん「ンゴは刀で首を跳ねても、縄で首を締めても、放って置いても毒で殺せるンゴ?もう気が済んだンゴか?」
イグル「参った。完敗だ!勝負にすらならねぇ!勝ち筋すら浮かばねぇ!子供と大人の喧嘩だ!ダハハハハ!!」
どみん「うぇえ…笑ってるンゴ…」
スゲェ!スゲェ!!とんでもねぇ!!
スキルに頼りもしないでこの力量差、結局俺は傷一つ付けられなかったぜ!
知りてぇ、この力・技術・思考。
俺はな、気になったら意地でも解かるまで地の果てまででも行くぜ。
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