自己紹介

アルカナが塾へと向かって歩いていると、道の先で数人の生徒が談笑しているのが見えた。ソルとエルフェルト、それに見覚えのない二人、彼らはまるで昔からの友人のように気軽に笑い合っていた。


「アルカナ!」


ソルが手を振る。


「誰?」


「最近塾に入った俺の友達」


「あー、あの人ね」


「アルカナ。左からエルフェルト、ルク、メデスだ」


紹介された二人を見やる。ルクはショートカットの女子で、どこか快活な雰囲気を持っている。一方のメデスは体格が大きく、見た目の印象通り寡黙そうだった。エルフェルトが一歩前に出る。


「僕とは会ったことあるよね?」


「えーっと……エルフェルト?」


「そうそう!」


彼の陽気な態度に、アルカナは小さく頷いた。



「最近成績どう?」


「ペーパー五割、実技七割ってとこかな」


アルカナがこたえるとエルフェルトがフォローする。


「いいじゃん。俺、ペーパー13点だよ」


「??? どうしたらそんな悪くなる、のか?」


アルカナは一瞬言葉を失い、軽く困惑する。すかさずルクが笑いながら補足を入れた。


「こいつ、模試中に寝たらしいよ」


「えぇ……」


さらに困惑したが、エルフェルトは気にする様子もなく「しょうがないよねー」と笑っている。その無邪気さに、アルカナは少しだけ肩の力を抜いた。



しばらく雑談を続けていると、ソルが時計を見て言った。


「そろそろ授業だな。塾行こうぜ」


皆が頷き、それぞれ塾の建物へと入っていく。




授業後、アルカナは少し迷ったあと、意を決して口を開いた。


「あの」


メデスが振り向く。


「どした?」


「話がある。みんなに──カムチャツカ半島の爆発事故について」


その一言に、談笑していた空気がふっと消えた。


エルフェルト、ルク、メデス、ソル──皆の視線がアルカナに集まる。アルカナは静かに息を整え、話を始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る