空の国と麒麟の王
華周夏
第1話 真実と旅立ちと新たな仲間①
この世界は『魔法』によってなりたっている。
地を祀る白の国。守護神は白虎。
火を祀る朱の国。守護神は朱雀。
風を祀る青の国。守護神は青龍。
水を祀る黒の国。守護神は玄武。
この四国、四神が仕えるものは
光を祀る空の国。守護神は麒麟。
すべて、それぞれ王家がある。
王に次ぐ権力者として、各地の神殿で守護神を祀る、国の最高神官がいる。生まれた土地により得意不得意な魔法がある。
そして四つの国を統べる、空の国があった。
十五年前の『天地の戦い』に四神は空の国の王を助けにいくはずだった。しかし、各国の神官たちが、ベラナヤシ山麓に結界を張って、この戦いを四神に隠した為、救援に向かえなかった。
四神は、空の国の王の味方である。
そして、変革や運命が周り出すとき、瑞兆を人々に伝える麒麟の番、鳳凰が姿を現すと言う。
その空の国の守護であり、すべての国で崇められていたのが『麒麟』だ。
『麒麟』──形は持たない空気のように存在する。すべての者とと共にある。
悪いことをしたら、その者が見ているのと同じ、麒麟も見ている。
反省したら、その者が見ているのと同じ、麒麟がも見ている。
やさしい神だが、邪な者には厳しいと言う。
空の国は大きな魔力を持っていたが、その力を怖れた他の四か国の連合軍により滅ぼされた。
空の民は欲を張らず、足りることを知っていた。
けれどある日、噂が流れた
『麒麟が掃除を始めるぞ』
『四神が掃除を手伝うそうだ』
やましい者だけがこれを怖れるはずが、皆、何故かほぼ全ての国の者が、攻撃性、残虐性を増した。
空の国の民は王家だけでなく、皆、強い魔力を持っていた。民の生き残りは存在しない。連合軍により殲滅された。
復讐を怖れ、禍根を残さないためだった。言われもない罪を着せられ、夜の火攻めの奇襲に合い、空の国は廃墟と化した。空の雲の中の穏やかな魔法の国は狂った四つの国により蹂躙され、汚された。
ちなみに『殲滅』──そう言われているが世界各地に息を潜める空の国の民は相当数いる。
今、空は天にある万物平等の国の物と解釈され、『空の国』と言う呼び名は廃止された。『麒麟の国』と呼ばれている。これが十五年前の『天地の戦い』である。
それから、麒麟の国に変わる各国の覇権争いが始まった。我が火の国は軍事に優れ、他の国を圧倒している。ちなみに、王家の血筋が濃いほど、その魔力は強い。貴族は王家と縁戚関係を持ちたがるのはそのせいである。
稀に平民で魔力が生まれつき強い者もいる。
そして、また魔力が極端に弱い者、無いに等しい者もいる。どちらも突然変異のようなものであり、一代限りである。
また、今は文明も進み、魔力だけではなく、人間の力で編み出した魔法──『科学』と言う分野も市民権を得つつある。それらを満遍なく身につけさせるのがこの魔術学校である──。
*********
「魔術学の歴史を要点を解りやすくまとめた素晴らしい作文です。フィル君ありがとう。席に戻って下さい」
壇上から席に着く前、フィルは僕に小さく、
「ごめんな。ホントありがとな」
と言った。クラスで僕はポンコツ。魔力もほとんど無い。無魔力者だ。簡単に言えば、『突然変異』の『出来損ない』だ。
《───next②》
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