好感度が見える魔道具を手に入れたので、興味本位で無口なメイドのことを確認したら好感度が限界突破してた

笹塔五郎

第1話 私に対する好感度

「――好感度が見える魔道具?」

「ええ、自身に対する好感度を数値化し、それを確認することができる――それが、この魔道具の能力のようね」


 片眼鏡をかけた鑑定士の女性は言う。

 可愛らしい顔立ちをした金髪の少女――シェリア・ファビウスは手に入れた魔道具を鑑定士に出したところ、そんな鑑定結果が得られたのだ。

 ファビウス家と言えば、『ローヴェルク王国』においては大貴族の一つに数えられる。

 そんな家柄の令嬢でありながら、彼女の趣味は魔道具集め――それも、自ら冒険者として登録し、探索して手に入れることに楽しみを感じている。

 元々、幼い頃に読んだ『冒険手記』がキッカケで、シェリアは冒険者を志したのだ。

 子供の頃は両親も反対することはなく、有名な冒険者になれるといい――そんな風に言ってくれていたが、やはり成長するにつれて、少しずつ反対をするような様子を見せた。

 大貴族の令嬢がどうして冒険者などに――そういう考えを持っていたのだろう。

 そこでシェリアがやったことは、冒険者登録をして魔物を討伐すること。

 自分だってできるんだと見せることで、両親を納得させようとしたのだ。

 ――結果として、シェリアは冒険者になることを認められた。

 元々、剣術だけでなく魔術の才能にも優れていたシェリアは、戦闘面でも優れた才能を持っていたのだ。

 そうして、冒険者として活躍しているシェリアのランクは『Aランク』――冒険者としても少し名の知れた存在である。

 そんな彼女が、とある迷宮を探索している時に見つけたのが、この古びた魔道具であった。

 元々、古い時代の魔術師が作り出した工房だったり、自身の財産を隠したり――未だに発見されていない迷宮がこの世界にはいくつもある。

 シェリアが何度か通っていた場所だが、まだ誰も見つけていない部屋があり、そこに残されていたものだ。

 もちろん――発見できた魔道具も機能しない物はいくつもある。

 だからこその楽しみであり、シェリアは聞いたこともない能力に心を躍らせた。


「好感度……それってつまり、相手が私を好きかどうか分かる……そういうことよね?」

「魔道具を動かす核に刻まれている『魔術式』によると――」


 鑑定士の説明によれば、以下のような能力だという。

 ゼロは無関心、あるいは他人。

 十は挨拶をする程度。

 二十から五十にかけて友人関係、親友関係となり。

 六十を超えてくると恋心を抱いているという。

 そして――七十から百にかけては、もはやゾッコン。

 婚約まで視野に入るほどに相手ことが好きなのだとか。


「面白そうな能力でもあるし、怖い能力でもあるわね。仲いいと思っていた相手がすごく低かったりしたら……」

「そうね。この魔道具の製作者はもしかしたら――人間不信だったのかも。それと、一応鑑定には成功したけれど、魔道具自体が相当古いもので、かなり傷んでいるわ。数回使ったら壊れる可能性もあるから、利用する場合には慎重に」

「なるほど……分かったわ! いつも鑑定ありがとうね」

「当然よ、これも仕事だもの」


 シェリアは魔道具を引き取ると――早速、宿の方へと向かった。

 冒険者の活動をしている時は普段、その近くで宿を取って生活している。

 動きやすさを重視した軽装であるが、あまり令嬢らしい恰好ではなく――実際、冒険者として活動している時くらい、令嬢として扱われたくなかったから、シェリアとしてはこれでよかった。

 ただ――


「おかりなさいませ、シェリアお嬢様」


 宿に戻ると、そこには一人のメイドの姿があった。

 長い黒髪を後ろに束ね、整った顔立ちをした女性――ヴェル・ハンデリィ。

 シェリアの専属メイドであり、かつては傭兵として活動していた経歴もある彼女は、護衛としての役目も果たしている。

 冒険者の活動をすると言っても、シェリアは貴族の令嬢――だからこそ、腕の立つ護衛のメイドがついた方が安心なのだろう。

 ただ、ヴェルはいまいち感情表現が分かりづらく、シェリアとしては彼女が本当のところ――自分のことをどう思っているのか、気になっていた。


(ヴェルは私が小さい頃から屋敷にいたメイドだけど……口数も多い方じゃないし。もしも、嫌々私に付き合っているんだとしたら――)


 それは、よくないことだろう。

 冒険者の仕事は危険が伴うことだ――シェリアは先ほど手に入れた魔道具を、こっそり動かす。

 腕につけるだけのタイプであるため、魔道具とは分かりづらい代物だ。


(さてさて、ヴェルの私に対する好感度はいくらかな?)


 理由はつけつつも、結局は興味本位――新しい玩具を手に入れた子供のような気持ちで、シェリアはヴェルの好感度を確認した。

 魔道具が発動すると、シェリアの目に一時的に魔術を付与してくれるようで――ヴェルの身体を分析し、好感度を確認してくれているようだ。


「……? どうかなさいましたか?」


 一方、ヴェルは戻ってきて早々、見つめてくるシェリアを疑問に思っているらしい。


「何でもないよ? ヴェルはいつ見ても綺麗だなって思って!」

「そうですか」

「ちょっと! もう少し喜んでくれてもいいじゃない!」


 ――黙っていると怪しまれるので、会話をして時間を稼ぐ。

 すると、結果が出た。


(よし、数字が出た――ん?)


 浮かび上がった数字を見て、シェリアは思わず首を傾げる。


(一、十、百、千――え、千?)


 桁が一つ多いのである。

 シェリアはまた、怪訝そうな表情を浮かべて数字を確認した。


(一、十、百、千……あ、やっぱり千だ)


 ヴェルに表示されている数字は千――つまり、シェリアに対する好感度はゼロから百の間ではなく、限界を超えているということだ。


「――って、どういうことなの!?」


 シェリアは動揺して、その場で大声を上げてしまった。

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