第12話 暇
「サッカー出来ないのって時間潰せないな」
「修斗くんって本当にサッカー以外しないよね」
「あの時からずっとやってたから、呼吸みたいなものだよね」
「生命活動と同率に考えるのは少し異常だよ?」
美咲から少し引かれた気がするが、こればかりは仕方ない。
物心着く頃からやっていたサッカーは、今や辞めたくても辞められない。
「あら、美咲ちゃんも来てたのね」
「修斗くんのお母さん、お邪魔しています」
「もー、前も言ったけど私の事は翠ちゃんでいいのよ〜」
俺の母さんは自身のあだ名である翠ちゃん(すいちゃん)と呼んで欲しいらしく、凄く笑顔で詰め寄っていた。
「え、えっと、翠ちゃん?」
「そーそー、翠ちゃん。と、いけないいけない。修斗、先生には許可とったから家帰るわよ〜」
「あれ?今日は病院じゃなかったの?」
病院の先生からは今日大丈夫そうなら、明日から学校行って良いって言われたんだけど、なんか話したのかな?
「別に安静にするなら大丈夫って、ついでに美咲ちゃんも家に来なさいな」
「え?でもお邪魔になってしまうのでは...」
「邪魔なんてないない。美咲ちゃんの親御さんには許可を取ったから、泊まってっていいわよ?」
「え?ヤグザの事務所に電話かけたの?」
許可ってそれくらいしかないよな。
だとしたらこの母親、肝が据わりすぎてる気がするんだけど...
「いやいや、まさか。今回の件のお詫びですってお金もってきたものだから、代わりに美咲ちゃん泊めて良いですか?って聞いたのよ」
まさかの想像の斜め上、直で言ってたよこの母親、これには美咲をびっくりしすぎて口を開けて固まっていた。
「あっ、えっと、家の人が失礼しました」
「ん?気にしないわよ。吉原組って危ないことしないのは知ってるからね」
俺、専業主婦のはずの母さんが怖くなってきた。
実はどこかの組長の母でしたとかないよね?
「母さんって何者?」
「え?普通の専業主婦だけど?今は」
今は?今はって言った?この母親!?
昔はなんだったの?ちょっと父さんに聞いてみよう。
「えっと、お邪魔じゃないなら是非お願い...します」
ほら、美咲もなんか怯えてるじゃん。
聞いた事ないってヤクザのそれも組長の娘をビビらせる専業主婦って...
そんな一悶着ありながらも、母さんの運転で俺は家へと戻ることが出来た。
「で、何で美咲を泊めるなんて話になったんだ?」
「あー、なんか拉致られるくらいの事が起きるなら、美咲ちゃんも危ないかなと思って、落ち着くまでは私の家で匿いますって言ったら、是非って」
「その言い方だとこれからずっと泊まるみたいになってない?」
「そう言ったじゃない?」
「少なくとも俺は聞いてない。多分美咲も聞いてない」
隣に座ってる美咲を見ると首を縦に振っていたので、美咲も聞いていなかったようだ。
「美咲ちゃんがどうしても嫌だって言うなら、無しにするけれど?美咲ちゃんみたいな可愛い子が、こんなサッカー馬鹿と暮らすって罰ゲームだろうし...」
「おい、ちょっと待て母さん。サッカー馬鹿はまだしも罰ゲームは言い過ぎじゃない?」
「そうだったわね。実刑判決かしら?」
更に言い草が酷くなった母さんにため息をこぼしていると、美咲がいつもより大きな声を出していた。
「そ、そんな事思ってないです!泊まりれるのは有難いんですが、もしかしたらご迷惑をかけてしまうかもしれなくて」
俺が拉致られた事によって、次は母さんにも被害がと考えている美咲は、どこか痛々しい表情をしていた。
「大丈夫よ。修斗がボコボコにされるくらいだから」
「一応実の息子だぞ?」
「女の子を守るのは男の仕事でしょ?」
「それって美咲なら当てはまるけど、母さんに当てはまるのか?」
「修斗?言っていいことと悪い事の区別がついてないのかしら?」
どうやら俺は地雷を踏んでしまったらしく、この後締められるのは確実らしい。
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