第11話

「現国はあるけど。かえんの?」








艶っぽい声にびっくりして振り返ると、ごつん!と何かにぶつかった。





「いたい……」



「あーごめん、距離感バグってたわ。」



「………。」





目の前は白一色。まぶしくて朝から目が覚める。



ちなみにこの方・・・には制服の概念がない。これ絶対カッターシャツの色じゃないし。






「悠ちゃんおはよ、だいじょーぶ?」



「………はい。」





どうやら私は、夜様のかったい胸板におでこをぶつけてしまったらしい。



夜様が中腰になって、はじめて目が合う。



顔が良い……今日も今日とて蠱惑的……………近いなおい。





「夜、お前そろそろ悠から離れたら?」



「えーだって心配なんだもん。」





なんで煽るんだよ。






「今日もかわいいねぇ……3年の教室いっしょにいく?」



「いや、いいです………」



「じゃあ1年教室までおくろーか?」



「いや、そう………」



「顔赤くね?だいじょーぶ?たんこぶとか…………………っと!!」









前髪をあげておでこに触れようとしたところで、急に夜様が飛び退く。









開けた視界には、焦ったような雷くんの顔。








「………………えっ!?………………………雷くん???」







え、嘘でしょ………そんな………








突然のことに動揺しながらも雷くんのもとへいく。








「ちょっと!!いま夜様になにしたの!?」



「ごめん………」




じわっ、と涙をあふれさせる雷くん。





「あのね、さっきから機嫌が悪いのはわかる。」



「………」



「もやもやしてんのもわかるよ?でも………」



「………」



「友だちに手だすのはちがうんじゃない?」







「………………ごめん……夜………ほんとごめん……」







「………………いーよ。避けたし。気持ちも分かるし。」






「ごめん……」



「いいって。らーいくん泣かないのー。……………ちょっと悠ちゃんから離れよ?屋上いく?」






こくん、とうなずく雷くん。



ちょっと負の感情が募りすぎたのかも………。



さすがに度がすぎるけど、いまはそう考えることにする。



次会うときは落ち着いてるだろうし………こういうときは知り合って2年足らずの彼女より、幼なじみの夜様のほうがうまく対処できるはず。

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