スカーレットウィッチ、魔法の呪文
志乃原七海
第1話。魔法の力
満月の光が、代々花屋を営む魔法使い一族の店「ムンディールの花園」を照らし出す。約束の10時を大きく過ぎ、2時間以上が経過した。70歳の族長にして社長、ラーマ・ヴァルマは、ヒンドゥー教の神々の力を宿した魔法の杖を握りしめ、ため息をつく。杖の先から、聖なるシンボルを模した金色と赤色の光が微かに揺らめくが、その輝きは弱々しく、ラーマの苛立ちを反映しているかのようだ。20歳の店長、ガウリ・シャーマは、心配そうにラーマを見つめる。
ガウリ:「ラーマ師…もう12時回りましたよ…。本当に来るんでしょうか?もしかして、闇の魔術師に捕まったとか…?」
ラーマ:(ぶつぶつと)わからん…この魔法の杖…月の力が弱まっている…(杖を何度も振るが、光は弱いままだ)…一体何のために来たんだ?面接に来る気があるのか?彼の魔法の才能は本物なのか? この老いた体に鞭打って、3時間も待たせたこの若造は一体…
ラーマは何度も杖を調整する。その動作はぎこちなく、焦燥感が見て取れる。杖から発せられる赤と金色の光は、ラーマの感情を映し出すように、激しく揺らめき、時には消えかかっている。
ガウリ:「来たら…どうします?履歴書には「ヴィシュヌ・クマール」って書いてありますけど…ラーマ師…(苦笑いをこらえる)…この時間ですよ?もしかして、魔法の迷宮に迷い込んだのかも…?」 それとも、あの噂の「魔法生物の群れ」に遭遇したとか?
ラーマ:(険しい表情で)ふむ…ふむ…(首を横に振る)…来ないだろうな…きっと、魔法の生物に襲われたに違いない…それも、彼の未熟な魔法が原因で…
ガウリ:「来たら…面接しますよね?ラーマ師!…さすがに「お帰りください」とは言えないですよね?(不安げな表情)…魔法の言葉で説得するとか…?」
ラーマ:(小さくうなずく)ふむ…ふむ…(しかし、その目は鋭さを増している)…面接?…するわけないだろう。魔法の試練を与えよう…彼の潜在能力を試すには、これしかない。
予定から3時間後、突然、店内に強い風が吹き荒れる。それは、嵐のような激しい風ではなく、どこか神秘的で、花の香りを運んでくるような、不思議な風だった。そして、ヴィシュヌ・クマールが現れる。彼の周りには、様々な花々が舞い上がり、まるで魔法のオーラをまとっているかのようだ。 しかし、そのオーラは、まだ制御しきれていない、未熟な魔法の力の象徴のようにも見えた。
ガウリ:(驚きを隠せない)うわっ!本当に来ましたよ!ラーマ師!…信じられない!魔法の力で…でも、随分と…乱暴な魔法の使い方ですね…。
ラーマ:(目を細めてヴィシュヌを睨む)ふむ…ふむ…(全く動じない)…遅刻の理由を聞こうか…魔法の力で遅れたとか…? まさか、あの「マンダラの花」に遭遇したとか?
ガウリ:(苦笑しながら)せっかく来たんですから…「お帰りください」はないですよね?(笑)…
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