《BL》アメジストの瞳
茶野森かのこ
1
「ほら、きれいだろ!」
光の花が囁くように舞う丘で、アメジストのような瞳が優しく微笑んだ。
泣きべそをかいていた少年は、その微笑みに見惚れ、すっかり涙が止まってしまったようだ。
「…うん、とてもきれい」
「だろ?」
嬉しそうなアメジストのような瞳をぼんやりと見つめ、少年は傍らにあった白い花を摘むと、その花にそっと息を吹きかける。すると、白い綿毛はきらきらと光を纏いながら、星の浮かぶ夜空へと舞っていく。
いつか、一緒に。
その煌めきに願いを込めて、少年は、ちらと、アメジストのような瞳を見つめた。彼の瞳は、きっと、世界中のどの宝石よりも美しい。それに、こんなにもこの胸を苦しくさせるのは、きっと、この先も彼ひとりだけだ。
少年は、ぐいと目元を拭うと、彼に向き直り、勇気を出して、その手を取った。
いつか、ではなく、必ず。その思いを込めて見上げた瞳は、この星空よりも美しく、照れくさそうにはにかむその額に、少年はそっと誓いのキスをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます