『ハルとの時間』

如月 煌

第一章:出会い

「お母さん、僕、そんなに長く生きられないの?」


病院の帰り道、陽向は母にそう尋ねた。


母は言葉に詰まり、「そんなことないよ」と微笑んだ。


けれど陽向は知っていた。

医者が「この子は10年生きられないかもしれません」と言っていたことを。


――その時だった。


どこかの茂みから、小さな鳴き声が聞こえた。


「クゥン……」


「……犬?」


覗き込むと、ボロボロの子犬が震えていた。


陽向は迷わず抱き上げる。


「お母さん、この子、僕と同じだね」


「同じ?」


「弱くて、小さくて、一人ぼっちだったんだよ」


そう言って笑う息子を見て、母は何も言えなかった。


その日から、子犬は「ハル」と名付けられ、藤崎家の一員となった。

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