31話 メスガキ、復興スイッチ押して大惨事!?

「はぁ……はぁ……」


私は今、瓦礫の山を運んでいる。

……いや、おかしくない? 私、一応「臨時統治者」なんだけど??


「ねぇねぇ、王都のトップが石運んでるのおかしくね?www」


私が汗だくで騎士団の残党に絡むと、相手は無表情で言い放った。


「あなたが壊した王都です。あなたが先頭で働くのは当然です」


「ぐっ……正論で殴ってくるな!!!!」


しかも周りの市民が、妙に期待の目で見てくる。


「さすが統治者様……!」

「自ら汗を流すなんて……!」


「ち、違うし!? 私は“やらされてる”だけだし!? 勘違いすんなよ!?」



その時、背後で「ぐぅ……」という寝息。


「……」


私はゆっくり振り向く。


瓦礫の上で、リリアが酒瓶を抱いたまま、気持ちよさそうに寝ていた。


「おい!!! 手伝うって言ったよな!?」


「ん~~……? 聞こえない~~……」


「起きろ怠惰の権化ァァァ!!」


リリアは片目だけ開けて、ぼそっと言う。


「めんどい……でも、早く終わらせたいなら、下の“アレ”使えば?」


「下のアレ?」


そこで、涼しい顔でレイナ(元・最強受付嬢)が書類を抱えて近づいてきた。


「……復興用の自動建築機構、ですね」


「なにそれ!? そんな便利なのあるなら最初から出せよ!!」


レイナは淡々と説明する。


「王都の地下にある“復興中枢”に接続された魔導ゴーレムです。

起動権限は、王家……もしくは臨時統治者のみ」


「……え、私いけるの?」


「はい。あなたが“いま”王都の上ですから」


「レイナ、言い方ァ!!」


◇ 復興ゴーレム、起動!


私たちは地下へ降り、巨大な扉の前に立たされた。

そこには、古代文字みたいなものが刻まれた制御盤。


レイナが私の手を制御盤へ誘導する。


「ここに触れて、“命令”を」


「命令ね。オッケー、任せろ」


私はニヤリと笑って言った。


「よし。瓦礫とかマジ邪魔。秒で片付けろよ?www」


――ゴォン。


地面が鳴り、壁が割れ、無数の石像みたいなゴーレムが目を光らせた。


「え、うそ、出過ぎじゃない!?」


ゴーレムたちは一斉に動き出し、地上の瓦礫を――本当に“秒”で片付け始めた。

崩れた家が積み木みたいに組み上がり、道路が平らになり、壁が立ち上がる。


市民たちの歓声が響く。


「すごい! 一瞬で……!」

「統治者様の奇跡だ……!」


「ふふん、まぁ? 当然だけど?www」


……やばい。気持ちよすぎる。

私、これ“王様ごっこ”向いてるかもしれない。


その勢いで、私は調子に乗って――余計なことを言った。


「ついでにさぁ、私の邪魔するやつも片付けとけよwww」


レイナがピクリと反応した。


「……今、なんと?」


「え? 邪魔なやつ? だってさっきから騎士団とか文句――」


その瞬間。


ゴーレムたちの目の光が、すっと“人間”に向いた。


「……対象:障害物」

「排除:開始」


「は?」


次の瞬間、市民が持ち上げられた。


「え、ちょ、ちょっと待っ――!?」

「きゃああああ!」


騎士団も、レイナも、そして――私まで。


「いやいやいや!? 私まで障害物判定!? なんでだよ!!」


ゴーレムの腕が迫る。

私は反射的に叫んだ。


「お前らさぁ! その命令、解釈ザルすぎ! ざっこwww」


――無反応。


「効かない!? え、煽り無効!? おい聞けよオラァ!!」


◇ リリア、面倒くさそうに“世界”をいじる


「……ん~、ほらね」


地上に戻ってきたリリアが、眠そうに頭を掻きながら言った。


「だから言ったじゃん。下のアレは“めんどい”って」


「めんどいじゃねぇよ!! 今、全員片付けられる!!」


リリアはため息をついて、片手をふわっと上げた。


「あー……じゃ、止めるか」


そして、あの意味不明な言い方で。


「メッシュ座標116・514――停止」


――カチン。


空気が固まったみたいに、ゴーレムたちが一斉に停止した。


「……は?」


私は唖然とする。


レイナも、騎士団も、固まっていた。


「な、なに今の……?」


リリアは酒瓶を振りながら、眠そうに言う。


「この王都、グリッド管理なんだよ。

復興中枢も、防衛結界も、座標で動いてる。知らなかった?」


「知らねぇよ!! てか、なんでお前それ知ってんだよ!?」


リリアは目を細めて、少しだけ笑った。


「昔、ちょっとね~。……めんどい話」


レイナが静かに一歩踏み出す。


「……復興中枢が暴走したのは、命令系統が壊れているからです。

このままでは、再起動した瞬間また“排除”が始まる」


「や、やば……」


私の快適ライフ(予定)が、全力で崩壊していく音がした。


レイナは淡々と告げる。


「臨時統治者としての責務です。中枢の修復に向かいましょう」


「嫌だ!! 責務とか重い!! 私はメスガキだぞ!!」


リリアがぽん、と私の頭を叩いた。


「でもさ~。放置したら、もっとめんどいことになるよ?」


「……ぐっ」


確かに。


めんどいのは嫌。

でも、“もっとめんどい”のはもっと嫌。


私は歯を食いしばって、拳を握った。


「……分かったよ!! 直せばいいんだろ直せば!!

終わったら絶対、私の銅像建てさせるからな!?www」


「却下です」


「即答すんな!!」


こうして――

王都復興の裏で動き始めた“中枢暴走”のトラブルに、私たちは首を突っ込むことになった。


しかも、リリアの意味深な「昔」の匂い付きで。


……絶対、面倒なやつじゃん。

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