第210話 一緒に付き合えよ
「『で?』ってなにがだよ」
「そこになんで俺様が連れてこられてんだよ! まったく関係ねえじゃねえか!」
「いいだろ別に、それにお前、暇だろ?」
「そういう問題じゃねえよ! 商談だったらお前一人でやれや!」
「商談じゃねえよ。ただ、在庫を見せてもらうだけだ」
「じゃあ猶更、俺様要らねえじゃねえか!」
「別にいいじゃんか、それにお前、どうせ暇だろ?」
「暇だけど暇じゃねえんだよ! というかその流れだと会話のループに入ることになんぞ!」
友情崩壊ダンジョン前、多死悲喜交々、共有スペース。
ベンチとテーブルが一体になっているものが等間隔に並んでいるものの一つに、試神と墓蒔が並んで座っていた。
時刻はお昼を過ぎたあたりなのだが、遅いお昼なのか、お弁当を広げている人もちらほら見える。アーケードのようになっておらず傘を差すスペースもないため、雨の日は無理だろうが今みたいに晴れていれば気持ちがいいことだろう。
当然……なのか。
試神と墓蒔の周りには、人がいない。
昨日と同じよう、遠巻きに観察しているだけだ。
「というかなんでお前は俺様を連れてきたわけ?」
「ん?」
「姿を見つけるなり有無を言わさず手ぇ引っ張って連行しやがって。ここにそのタタンとかいうやつがいるのかと思ったぞ」
そんなわけないじゃんか、と試神が言うが、実際のところ、墓蒔にはそれくらいしか連れて来られる理由が思いつかなかったのだ。
一昨日のことを知った上司が―――部下を殺されそうになったことを知った上司が、わざわざ挨拶に来た。
そう考えても不思議ではないだろう。
なにせ試神だけではなく心殺も……創造根底館の職員を二人も、相手にしたのだから。
ケンカを売られたと思われても仕方ない。
それに一番の問題は。
今日はまだ、ダンジョンに潜る前だったこともあり、<ラストワン>を発動してはいないことだった。
タタンどころか、再戦をと意気込んだ心殺がいたとしても、抵抗すらできず殺されていただろう。
命人形・形身代わりはまだ残っているが、向こうもそのあたりは対応してくるはず。残りの異物でも、それは変わらないはずだ。
言葉を発する前に滅される。
今の墓蒔は、驚くほど無力なのだ。
実際、腕を掴まれた試神にすら満足に抵抗ができなかった。
そんな状態で連行されようものなら……。
冗談じゃなく、死を覚悟した瞬間でもあった。
「さっきも言ったけど、あいつは会社だよ。パソコンを持ってきてここで電話会議もどうかと思ったんだけど……まあセキュリティ面もあるし、あいつはあいつで仕事があるだろうしな。仕方ない」
「その仕方ないで、俺様も見逃してくんねえかね」
立ち上がろうとした墓蒔の腕を。
「まあまあ、もうちょっとゆっくりしてけよ」
試神がにこやかに掴んだ。
「ここまで来たんだ。一緒に付き合えよ」
「だから! なんで俺様なんだよ! 俺様がなにしたんだよ!」
「簡単だよ。お前が、俺の視界に入ったんだ」
「……はあ?」
なんの冗談かと思い試神の顔を見れば。
思いのほか、試神は真面目な顔をしていた。
「タタンから聞いたよ。お前、味方殺しの『ラストワン』って呼ばれてんだって?」
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