第7話 一歩

新しい世界への第一歩を踏み出す決意を新たにした私の胸には、どこか不安と興奮が入り混じっていた。アド・ノストラの言葉が、まるで重しのように心に響き続けている。「君には大きな役目が待っているから、しっかりと覚悟を決めるんだ」という言葉が、どうしても私の中で一つの謎として残った。役目?何をするべきなのか、どうして私なのか…。


アド・ノストラは私を連れて、少し離れた場所にあるビルへと向かう。そのビルは、普通のものとは少し違う。外観からして、普通の街並みに溶け込んでいるようで、どこか異様な気配を放っている。建物に近づくにつれ、その独特の空気に不安を覚えると同時に、何か惹かれるものを感じていた。


「さあ、行こうか」とアド・ノストラが言い、私を先導する。私たちがビルの中に入ると、そこで待っていたのは、いくつかの顔見知りのスタッフたちだった。彼らは私のことを、まるで以前から知っていたかのように、さっと受け入れてくれた。


「ルナさん、お待ちしておりました」と、一人が私に微笑みかける。その言葉に、私は一瞬混乱する。自分が「ルナ」として認識されていることに、少しだけ戸惑いを感じていた。


「うん、よろしくお願いします」とだけ言ってみたものの、内心ではまだ少しだけ抵抗感があった。それでも、これから始まる新しい生活に向けて、もう引き返せないことは理解していた。


その後、スタッフに案内されるまま、私はいくつかの手続きや確認を受ける。新しい学校に必要な書類、施設の利用方法、そして日常生活に必要なアドバイス。すべてが新しく、そして少しずつ私をこの新しい世界に溶け込ませていく。しかし、私の心の中では、アド・ノストラの言葉が繰り返しこだまする。「君には大きな役目が待っている。」


その「大きな役目」が何なのかは、まだはっきりと分からない。だが、この新しい名前、そして新しい人生に、私は確かに何か重い使命が課されていると感じていた。それは、アド・ノストラが私に何か特別な役目を与えようとしているのか、それとも私が自然にその役割を担うことになるのか…。


そんな疑問を胸に抱えたまま、私は新しい学校の門をくぐることになる。周囲の学生たちの視線が私に向けられ、さまざまな表情が私に突き刺さった。好奇心、警戒心、無関心――それらが交錯する中で、私は自分の新しい世界を一歩一歩進んでいく。


「ここで、何が待っているのだろう?」その問いは、心の中で何度も繰り返し鳴り響く。しかし、答えはまだどこにも見当たらない。ただ一つ確かなことは、私はもう後戻りできないということだ。


この新しい世界では、私が誰であろうと、どんな過去を持っていようと、ルナ・ノストラとして生きなければならない。自分の力を制御し、そしてこの「役目」を全うするために、私は何をすべきなのか…。答えを見つけるまで、私はこの道を進むしかないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る