135魔道具教育

「拓って何時も森に籠るわよね。

 でも今日位、居れば良かったのに。」

「拓様は仕事をされていますから仕方ありません。

 お嬢様がしっかりと学んで教えてさし上げれば喜ばれると思いますよ。」


文句を言うサーシャをマリーがたしなめていた。


「今日はシルビア様に魔道具について教育を受けるのですから

 もう、準備をしませんと。」


シルビアがヘンデリック侯爵の屋敷に世話になっている礼としてサーシャ、ヨハン、ヘルガ、ユンクに講義を行ってくれることになっている。

元第3位の宮廷魔導士から直接受けられるとなり、朝からサーシャのテンションは高い。

昨日はユンクとその話ばかりし、夜はマリーに話続け、早く寝る様にたしなめられる程だった。


部屋で待っているとヘンデリック侯爵、オーヘンに連れられてシルビアがやって来ると

ヘンデリック侯爵とオーヘンも部屋に留まり、一緒に抗議を受ける。


魔道具を簡単に説明すると、魔力に反応する素材と魔力を制御する魔法陣、そしてエネルギー源となる魔力から出来ている。

魔導士なら魔力を直接供給しても良いし

魔導士でなくても、魔力を溜めた魔石から供給しても良い。

例外も存在し、マジックバックは魔力を使い内部に広い空間を作り出しているが

内部に魔力の閉鎖空間が出来上がっているので維持するために魔力供給の必要はない。


「説明ばかりではつまらないでしょうから、簡単な魔道具を作ってみるわね。」


シルビアがゲートを開いて取り出したのは、ガラスで出来た花のブローチや水色の鉱石、そして魔石だった。


「この鉱石は魔力を与えると発光する性質が有ります。

 ただ、光が弱くて屑石って呼ばれているわ。

 既にこの鉱石に魔法陣を描いてあるので、組み立てるだけなんだど。」


そう言って、シルビアが造形魔法を使ってガラスのブローチの中に鉱石を埋め込んだ。

鉱石の後ろは窪んでいて、そこに光の魔力を蓄えた魔石を嵌めると


「綺麗」


思わずサーシャが声を出してしまったが、仄かに光る花のブローチの魔道具が出来上がった。


「ちなみに、このブローチは拓のアイディアで、花のデザインも拓よ。

 こんな風に屑石と呼ばれていても、魔道具次第では十分に価値のある素材になります。

 考え方次第で、面白い魔道具が作れるわ。」


出来上がったブローチは、そのままサーシャにプレゼントされた。

喜ぶサーシャが落ち着くのを待って、次にシルビアがゲートを開いて取り出したのは扉の付いた巨大な箱。


「ちょっと面白い魔道具も作ってみましょうか。」


この巨大な箱はシルビアがこの教育を行う事にした本当の目的。

ヘンデリック公爵に世話になっている礼も有るが、どうしてもかなえたい望みを達成させるためにどうしても必要だった。

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