120解読

解読は記憶の腕輪が行うが、それを読めるのは拓だけなので

ドクスとフォスターへ言葉で説明するのに時間がかかる。

流石に、ヘンデリック侯爵達には先に帰ってもらおうとしたが、拓達に付き合って残っていた。


「これで、大まかな解読が終わったかな。」

「こんな簡単に解読が出来るとは思わなかったぞ。拓は凄いな。」

「俺じゃなくて、記憶の腕輪の力ですよ。

 解読を行ったお陰で、ここに来た目的の1つが手に入りました。」


ガラの腕に掛かったアンデットの呪い。この解除方法が載っていた。


「それだけでも分って良かった。しかし、これはこれで大変だな。」

「これで治せるなら何とかしますよ。」


全てが終わり、ヘンデリック侯爵に報告することにした。



「しかし、拓殿は古代文字も解読できるのか。」


ヘンドリック侯爵が感心するので


「いえ、薬草や薬の単語を読むことが出来るだけです。

 ただ、今回の場合は、それだけ読めれば必要な古文書を選ぶことが出来ましたので。」


勢いで文章変換をしてしまったが、拓の歳で解読なんて在りえない話だ。

拓だけでなく、ドクスもフォスターも古文書の解読に熱中してしまい、他の事は何も考えていないみたいだったので

その様子を見ていたガラが、事前に助言をしていた。


「ガラの呪いは解く方法が分かった。」


ドクスの言葉にヘンデリック侯爵、サーシャ、ヘルガがガラの方を見る。しかし、


「お嬢ちゃんの状態を直す方法は見つからなかった。

 しかし、落ち込むなよ。拓が居れば余計な古文書の分類は可能だ。

 必要のない古文書は他の古文書と交換してきっと見つけてやる。」


ドクスは何か悪巧みをしている様で、ニヤリと笑った。


「お嬢ちゃんの体の事、フォスターさんに話しても良いか?

 信用できるし、元宮廷魔導士トップと2番が揃えば力強いぞ。

 フォスターさんも緑の髪について調べているから、既に気が付いているだろうがな。」


ドクスは拓を見て、笑っていた。

拓は今になって自分の不用心さに気が付き、ヘンデリック侯爵やサーシャに謝った。


「いや、謝る必要はない。

 王都で拓殿が調べた内容だと、フォスター魔導士の協力が無ければ出来なかったのは分かっていた。

 フォスター魔導士なら問題ない。

 ドクス魔導士宜しくお願い致します。この恩は、必ず返させてもらいます。」


ヘンデリック侯爵が頭を下げようとすると、ドクスはそれを止め


「恩を感じるのはいいが、返す必要も頭を下げる必要もない。

 その代わり、領地に伺った時には泊まる場所と食事を頼む。

 そうと決まったら、貴族どもの屋敷を回る準備をしないといけないな。」


やけに楽しそうな感じで拓を置いて、家に帰ろうとするので

思わずサーシャがクスリと笑った。


「サーシャが笑ってよかった。」


拓がほっとして話しかけると


「さっきまで落ち込んでいたわよ。

 でも、こんなに皆が動いてくれていると思ったら嬉しくなって

 拓も本当にありがとう。

 先ずは、ガラさんの呪いを解く事から始めましょう。」


微笑むサーシャを見て、拓は頷いた。

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