004鍋料理

「どうよ、俺達の成果は」


バンがゲートを開き、収納していたボアの肉を取り出した。

既に血抜きをし、解体を終えている。


「「おぉ」」


拓とジャンの反応にドヤ顔になってしまうバン。

早速、串に刺して焼こうとすると


「こちらも食材を入手してきたので、鍋にしませんか。」


拓がゲートを開いて鍋を取り出す。

ジャンが竹を割って作った器と箸まで用意していた。


直ぐに焚き火の上に鍋を置けるようにかまどを作ると、拓とジャンが料理を始めた。

暫くすると、鍋から良い匂いが漂ってくる。

拓が味見をすると


「キノコから、良いダシが出てますよ。」


そう言いながら、拓は調味料を取り出して味の調整を行っている。

最後に、ジャンが味の確認をすると


「これは美味しいよ。拓ちゃん、薬師も良いけど料理人を目指すのも良いかもしれないね。」


野外料理でジャンがこんな風に褒めるのも珍しい事だった。

普通なら、腹が膨れれば十分と考えているので無理の無い事だが・・・

早速、皆で食べると、


「本当に美味いなこれ。」

「こんな状況で、こんな上等な食事ができるなんて思わなかった。お嬢にも食べさせてやりたいな。」


トウ、バンにとっても、この状況で食べれるとは思っても無い味だったが、バンの何気ない言葉に3人は黙ってしまう。


「そう言えば、グレンの実も取って来たんだよ。食後に食べよう。」


ジャンが話を続けると、トウもバンも直ぐに話を切り替える。

拓は不自然さを感じながらも、特に口は挟まない。

あっという間に食べ終ると、デザートにと拓がグレンの実を取り出した。


「グレンの実か。良く見つけたな。」

「みずみずしくて美味いな。デザートまで付いて普段食べている料理より豪華なんじゃないか。」


トウとバンもその味を喜んでいた。

トウ、バン、ジャンは、日常以上の食事に満足していた。



夕食が終わった後、拓は鍋を避け、串に刺したボアの肉を焼き始める。


「火を通しておけば数日はもちますから。」


そう言って、焼いた肉を大きな葉で包んでバンに渡している。

全てを収納せずに味見をさせて貰ったが、丁度いい塩加減で酒が欲しくなる味だ。

他にも拓が持っているスパイスで味付けがされたのまで作っている。

ここが魔獣のいる野外なのが残念だ。

バンもジャンも同じ事を思ったのか「ここが町の中だったらな」と呟いている。


「そうだ拓、良ければこれを受け取ってくれ。」


バンから渡されたのは、ボアを解体した時に出てきた魔石。

魔石は、魔獣の体内や魔力の集まる場所で発見される鉱石だ。

魔力を蓄えることができ、魔道具のエネルギー供給源として使われる。

拓は礼を言って、受け取った魔石をゲートを開いて収納した。



次の朝、拓は残った汁に米を入れ、水と具材を追加して蓋をする。

出来上がったのは、炊き込みご飯。

朝から満足な食事をし、残った分でお握りを作ると、街道を歩き始めた。

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