桜の花弁の数だけお喋りしてる

『こりゃすごいね』

 一部を除いて聞こえないのに、僕はつい嘆息の声を上げてしまう。この国で妖精は生き辛いが、人が行き交う場所は別。初詣にお盆、そして今日のお花見。こういう場所は〝精〟達が賑やかで。



 ――そろそろ結婚式?

 ――えー? ウチはこう君派。やっぱり幼馴染みが報われて欲しい!

 ――でも絶対に王子と櫻ちゃん、両想いだもんね。

 ――押せばいける! 庚にはそれが足りない!




 ひらり、桜の花弁が舞う。

 それは妖精の僕らから見ても、幻想的な風景だった。




(あれ……王子と目があった?)




 彼女の髪についた花弁を、まるで髪飾りのようだと囁く。櫻は頬を桜色に染め。アイツは苦虫を潰した顔で見やる。そんな彼らをさかなにお喋りが――精の宴は続く。

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