第7話 コードマスターの力

孝太は、自分のステータスカードを見つめたまま呆然としていた。


【名前】孝太

【レベル】1

【職業】コードマスター

【スキル】

・《プログラム言語の加護》

・《デバッグモード》


(コードマスター……いったいどんな職業なんだ?)


ギルドの受付係ラナも、首をかしげながら言った。


「聞いたことのない職業ですね……。おそらく、何か特殊な能力があると思うのですが……」


「スキルに《デバッグモード》ってあるな。何か試してみたらどうだ?」


ガルフが腕を組んで促す。孝太は戸惑いながらも、頭の中で《デバッグモード》を意識してみた。


すると——


[デバッグモード起動]


孝太の視界に、ゲームの開発画面のような半透明のウィンドウが浮かび上がった。


デバッグモード

• 環境情報表示

• オブジェクトの属性編集

• コード入力


(……これ、まさか……プログラムのデバッグ画面みたいなものか!?)


孝太は試しに「環境情報表示」を選択してみた。


[環境情報]

• 地域名:バルドール王国 首都バルドール

• 現在時刻:第2太陽歴 352年 14日目

• 近隣オブジェクト:ガルフ(NPC)、ラナ(NPC)、冒険者たち(NPC)


(……NPC!?)


孝太は思わず驚いた。この世界の人々が「NPC」として認識されている。

まるでゲームの内部データを覗いているようだった。


「お、おい、どうした?」


ガルフが不思議そうに孝太を覗き込む。孝太は一度深呼吸して、落ち着きを取り戻した。


(つまり、この《デバッグモード》を使えば、世界の情報を解析できる……?)


次に「オブジェクトの属性編集」を選んでみた。すると、ガルフの名前の横に「編集」ボタンが表示される。


(え……? まさか……)


試しに、ガルフの【筋力】の値を +1 してみると——


「……うおっ!? なんだ、急に力が湧いてきたぞ!?」


ガルフが驚いたように拳を握りしめた。


(……やっぱりだ)


この《デバッグモード》は、世界そのものを編集できる能力 なのかもしれない。


孝太は、自分が得たこの能力の恐ろしさと、無限の可能性を同時に感じていた。


「……これは、すごい力を手に入れたのかもしれない」


だが、その力に気づいていたのは孝太だけではなかった。


ギルドの奥から、鋭い視線で孝太を見つめる男がいた——。

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