炉にくべる
ミTerら使
第1話 ヴァルシュタイン帝国皇太子襲撃事件
初作品です(免罪符)
更新は良くて週に一回ぐらいかなと。最低1ヶ月に二回は更新したいかなと。勢いです。
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始まりは小さな鉛玉だった。弾圧され続けた民族は正義を語り、いかに帝国は悪かを語った。
感化された青年は拳銃を手に取った。すべてはこの国を“正しい姿”へと変える為。
革命のときは来た。
すべては自由と正義の為───
◇
六月のヴァルシュタイン帝国帝都プローランドは、陽光が街の石畳を照らし、通りに響く馬車の音が活気を伝えていた。皇太子は、妻とともにオープンカーの後部座席に座り、行く手を見つめていた。人々の歓声が周囲に満ち、軍楽隊の演奏が祝祭の空気を添えている。しかし、彼の胸には奇妙な違和感が渦巻いていた。
「殿下、念のため警備を増強すべきかと……」
副官が耳元で囁くが、皇太子は静かに首を振った。
「いや、これ以上の警戒は民衆を不安にさせる。私たちは彼らの敵ではない」
近年の世界情勢はお世辞にもいいとは言えなく、どこを見ても何かしらの爆弾を抱えていて、すべての爆弾は一つでも爆発したら致命的なほどだった。
ただでさえ民衆は不安なのに護衛を増やそうものならあることないことが色々渦巻いてしまうかもしれない。
ここは民衆の為にも護衛を抑えて我が国の治安に安心してもらおう、というのが王太子の考えだった。
彼の表情には、自らの信念と誇りが刻まれていた。だが、その理想が儚いものに過ぎないことを、彼はまだ知らなかった。
午前十時過ぎ、車列がミールジャ川に沿って進んでいた。大通りに差し掛かると、突如として爆発音が轟いた。
「爆弾だ!」
先頭の車が炎に包まれ、兵士たちが混乱に陥る。皇太子の車は即座に停止し、周囲を警戒する兵士たちが銃を構えた。群衆は悲鳴を上げ、広場へと逃げ惑う。
「殿下、ご無事ですか?」
皇太子は息を整えながら頷く。爆弾は命中せず、辛うじて危機を逃れたのだ。しかし、これは始まりにすぎなかった。
犯人はすぐに取り押さえられたが、何かがまだ終わっていないという直感が皇太子の胸を締め付けた。それでも予定通りに進むと決断し、車列は再び動き出した。
正午を回る頃、彼は市庁舎での式典を終えた。外へ出ると、妻がそっと腕を組む。
「もう帰りましょう、あなた……」
「いや、負傷した者の見舞いに行かねばならん」
妻は心配げに眉をひそめたが、皇太子の意志は固かった。
車列が病院へ向かう途中、運転手が道を誤った。狭い通りで車が減速したその瞬間——
「撃て!」
叫びとともに、鋭い銃声が響いた。
一発目の銃弾が皇太子の首に食い込み、二発目が妻の腹部を貫いた。彼は即座に彼女を抱き寄せた。
「ゾフィー……!」
彼女は苦しげに微笑み、静かに囁く。
「あなた……無事で……」
皇太子の視界が揺らぐ。熱い血が喉を満たし、声を出すことすら叶わない。周囲の兵士が犯人を取り押さえたが、もはや意味はなかった。
世界がゆっくりと暗転する中、彼は最後の力を振り絞り、妻の名を呼んだ。
「ゾフィー……」
だが、その声は、誰にも届かなかった。
火薬が炸裂し軌跡を描いた弾丸は、悪を打ち破った。捕らえられた青年は目的を達し、過ちと盲信に気付く。
これは正義の為の革命ではないと、これは序章に過ぎず地獄の淵が顔を覗かせているということを。
───我々、アーリの民に再来を!!
───希望を!自由を!解放を!
───王国の再来を、時は満ちた。すべてのアーリ系民族は武器を持て!これは分断された私たちを再統一するための聖戦である!
軌跡は大陸の火薬庫へと火を付け、命を燃料に戦い続ける大戦の火蓋を切ることになった。
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