第12話「大暴れ万引き犯」
少し肌寒くなったいつもの帰り道、角を曲がれば夜道にぼうっと光を放つコンビニ。
でも今日は店の前に停まるパトカーと救急車のパトライトが騒がしい。
速足で近づくとコンビニは営業しており、カウンターには長久くんがいた。
「なにかあったの?」
「万引き犯が大暴れして・・・」
「大丈夫?!」
「オレは今日休みでいなかったんすけど、店長が・・・」
そう言って俯く長久くんの腕を私はカウンター越しに掴み「ねぇ!竜太がどうしたの!」と揺さぶった。
「別にどうもしないよ」
後ろから聞こえる声に振り返ると腕に包帯を巻いた竜太が立っていた。
コンビニの制服は所々赤黒く、血が乾いた跡がある。
「長久、休みなのに来て貰ってごめんな。もう大丈夫だから」
「大丈夫なんかじゃないっすよ、連絡受けて駆けつけたら店長血まみれで、オレ、本当どうしようかと思ったんすよ」
長久くんは泣いてしまってそれ以上しゃべる事が出来なかった。
「竜太、怪我したの?大丈夫なの?救急車は?」
「ちょっと切っただけで平気だから帰って貰ったよ」
「ダメだよ!一応色々検査して貰った方がいいよ!どこか痛かったり苦しかったりしないの?!」
竜太にこんな怪我させて、バイトの長久くんも怖かったろうに、2人にそんな思いをさせた犯人が許せない。
色んな感情が一気に溢れて私も嗚咽泣きが止まらなかった。
「営業中だから長久も仙花も落ち着いてくれ」
私と長久くんはイートインスペースに押し込まれ泣き止むまで出てくるなと言われた。
それから数分後。
竜太が私と長久くんにお茶のペットボトルを一本ずつくれた。
「長久来てくれて助かったよ。仙花も帰りな?時間も遅いし」
「でも」と渋る私達の背中をグイグイと押す竜太。
「わかったから押さないで怪我してる手使わないで。もし具合悪くなったりしたらすぐ救急車呼ぶか私に電話するんだよ!」
「彼女さん!オレやっぱ今日このまま夜勤出るんで任せてください!」と長久くんが強い目力を私へ向けた。
だから彼女じゃないって何回か言ったじゃん?とツッコミたい気持ちはあったが私はそれを飲み込む。
私と長久くんは無言で見つめ合い固い握手を交わした。
竜太は溜息をついていたけれど、そんな事はどうでもいい。
帰宅した私は何か役に立つ物はないかと本棚を見たがゾンビ撃退法の本くらいしか見当たらない。
流石にバールで万引き犯の脳は狙えない、私が捕まってしまう。
そして動画サイトで護身術を
翌日届いたダンベルは私では持ち上がらず竜太に引き取られていくのであった。
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