左遷高校生

カク セカイ

第1話 魔術競技


世界的なスポーツ【魔術競技】


数十億人のファンが熱狂し、世界中で人気を集める一大スポーツだ。


森、デパート、ゴミ処理場などをモチーフにしたフィールドが展開され、その中で魔法を使った激しいバトルが繰り広げられる。


街の小さな争い事から紛争までも解決する魔道士は、魔法競技のプロを副業として活動している。なぜなら、この競技は実践の戦闘に深く結び付いており、訓練的要素が多く含まれているからだ。


多くのプロ選手が国民から尊敬され、子どもの憧れのスターとして認知されている。スター選手ともなれば数億円もの年収を稼ぎ出し、大きな個人事務所で何人もの魔道士を雇用する。

プロの魔法競技選手となるには、魔道士になることが必須であり、幼い頃から英才教育を受ける必要がある。

一流の小学校、中学校、高校の魔法競技部を卒業し、魔道士試験に合格することが近道となっている。


魔道士になれるのはほんの一部の人間であり、それが選ばれし者と言われる所以である。


そんな選ばれし者の中から頂点に君臨する人間。それこそが大魔導師である。


魔法競技のランキングで頂点に君臨し、尚且つ国民から認められた魔道士の指揮権をもつ者。国家から正式な役割を与えられ、政治や経済への大きな影響力を持つ。


現在の大魔導師はキング レイ、30歳。歴代最年少の大魔導師であり、魔術競技ワールドカップの個人戦で準優勝経験がある。


魔術競技において、日本人が準優勝するのは快挙である。


魔術競技の世界ランキングには、1位のアメリカを筆頭にフランスやイギリス、ブラジルなどの強豪国が後に続く。日本のランキングは10位であり、世界の頂点を目指せる魔道士は存在しなかった。この男を除いて。


キング レイは、所謂エリートとはかけ離れた人生を送ってきた。幼い頃に魔法医師だった両親を紛争で亡くし、紛争地域に残された彼は、たった一人で暮らしてきた。


16歳の時、拾った杖で遊んでいたレイの才能に目を付けたアメリカ人魔道士によって引き取られ、本格的に魔道士としての道を歩むことになった。


魔道士として確かな地位を確立したレイは、20歳で祖国日本へ戻り、数々の快挙を成し遂げていった。

若くしてカリスマとなったレイは多くの子どもたちの憧れとなり、日本における魔法競技の発展に大きく貢献した。


そして、現在……


最年少の30歳で大魔導師となったレイは、キング レイの愛称で知られるようになり、多くの企業の広告塔になるなど有名人の仲間入りを果たした。


レイが開いた12月のクリスマスイベントには数十万人の観客が集まり、まさにアイドル並みの人気である。


その観客の中に、一際目を輝かせている1人の少年がいた。


都立久田里坂第三中学校の2年生青山昴(あおやますばる)である。


彼もまた大魔導師に憧れるごく平凡な少年の一人であり、日々魔術の勉強に励む勤勉家でもある。


彼は魔道士になるまでの道筋を逆算し、最適な進路を導き出す戦略家であり、普通の中学生よりも大人びている。

弱気な一面もあるが、彼が目指すのは国内屈指の名門校華王学園高校魔法競技部。


何百人もの魔道士を輩出する名門校だ。


昴の親友であり、同じ学校に通う金光幸一(かねみつ こういち)と共にこの学校に入学するための努力を重ねている。


これはそんな普通の中学生である昴が、魔法競技と共に成長していく記録である。


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