第33話 ローズ告白する

 ポール商会のジャンは、突如出したくなったくしゃみを我慢した。目の前にいる好きな子の前で変なくしゃみをしたいとは思わない。

 更に言えば話があると深刻な表情で来たのにくしゃみで台無しにしたくない。


「ローズ、わざわざ話があるってなんだ」


 ローズの口が何か言いたげに開くが俯いてしまう。ポール商会は、忙しい時期だからゆっくり出来ないが商人の勘が聞くべきと訴えかける。

 しかし愛の告白ならば時間もお金も投げ出す価値があるとローズの口が開くのを待つ。


「俺の困ったことを真剣に悩んで付き合ってくれたのは、ローズだけだった。今度は俺がローズを助けたい」

「この国は戦争になるから逃げて下さい……!」

「市場の流れを見ると戦争の兆候はない。ローズは何を知っているんだ」


 戦争なら兵糧や武器、人、馬の流れが大きくなる。それにより不足が発生し市場価格が上昇するはずだがない。


「今夜戦争が起こるか決定されるんです。私じゃもうどうしようもなくて。戦争エンドが回避出来ない」

「落ち着け。お茶を飲んでゆっくり息を吸うんだ。焦らなくていい。怖がらなくていい。俺は、ローズの味方だ」


 ゆっくりとお茶を飲み深呼吸するとローズは、少し落ち着きを取り戻したようだった。


「ジャン、聞いて欲しい」


 ローズの語ったことは、信じられない前世と遊戯の話だった。しかし全員が幸せになれるように頑張ってきたと思う。


「シュバルファン殿下が、私を選べば戦争が始まってしまう。けれど私がいなくなればみんな冷静になって戦争しないことになるかもって。だから」

「みんなに俺も含まれているのか」

「はい、でも一人じゃ国外に出て暮らすのは難しいと思って。色んな所に行ったジャンに助けて欲しい」


 ローズが顔を下に向けているので表情が分かりにくい。


「一つ聞きたい」

「は……い」

「ローズは誰が……好きなんだ」


 王子が好きだから離れるのか王子が好きじゃないから離れたいのか。頼ってくれる時点でローズにとってジャンの存在が小さくないと思う。


「私は」

「ローズ、迎えに来たよ」


 開かれた扉から入ってきたのは、渦中のシュバルファン殿下だった。


「えっ、どうして!?」


「ローズのためのドレスがやっと出来たんだ。今日は記念するべき日だから着飾って欲しくてね。早めに城へ招待しようと思って来てしまったよ」

「殿下、あの着るドレスも手伝ってくれるメイドもおりますので。だっ大丈夫です」

「ローズは、謙虚だね。どこかの誰かと大違いだ。心配しなくていい。男爵家には準備不要だと連絡を入れたからローズは、僕と一緒にくればいいだけ。さぁ、行こう」


 シュバルファンは、ローズの手をとり部屋の外へ出るように促した。シュバルファンは、ジャンを見ると勝ち誇った顔をしている。自国の王子なのに嫌な顔だとジャンは思った。


「ジャン、話を聞いてくれてありがとうございます」


 ジャンは、退室時のローズの目を見て腹を決めた。そのための準備を始める必要がある。

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