フーテン、死を語る

 現在就職活動中だ。なるべく働きたくないが、金がないから仕方がない。生きるとは悲劇だと、つくづく噛み締める毎日だ。

 死の匂いがするものが好きだ。

 思えば高校生の頃からこの性癖は顔を出して、僕の嗜好を形作っていったと思う。

 チェスターベニントン、ジョーイジョーディソン、リルピープ、ジュースワールド…僕が好きだった音楽家達は皆なんらかの形で死んでいった。

 生と死の綱渡りをしている人達を見ると、同族嫌悪が胸を焦がす。嫌悪感と同時に、彼らへの共感がムクムクと頭をもたげ、僕の心を学生時代へと連れ戻す。

 僕は学生時代いじめられっ子だった。原因は明らかで、僕があまりにキモかったからだ。女子の前では下品な話をして、男子の前では暴言を吐く。嫌われるのが当然だ。

 席替えで隣になった女子が泣き出した時もあった。その時、僕は手持ち無沙汰になった悲しみを誤魔化すため、笑い続けた。思い返すと嫌な気分になるので、ウイスキーをがぶ飲みすることにした。酔って記憶を飛ばすまでの間、なんとかしてこの文章を書き上げたい。

 今更彼らのせいにするなんてことはない。子供心のまま、大人と子供のグラデーションである彼らの中に突っ込んでいった僕が悪いのだ。

 ただ、彼らの中に異物を受け入れる多様性があったら僕はここまで歪んでいなかっただろう。その点では、彼らを恨んでしまう。その反動で僕はこうなりたいという大人の姿に「変身」して、ゲイバーで熟女とベロキスすることになるのだが、今回の本題とは話がズレるので、汚いトイレにでも置いておこう。

 結局僕は自分、並びに自分が属する社会的集団が憎かったのだ。ある種凶暴的なまでに憎んでいた。明日目が覚めた時、僕が僕じゃなければいいと何度願ったかわからない。そんなモヤモヤを抱えながら床に着くものだから、僕は酷い不眠症になった。

 1〜2時間の睡眠のために、6時間ほどの布団で何もしない時間が続く。頭の中で物語を作り上げるのがクセになったのはこの時の体験が大きい。もっともこの時は、自分に似た人間をひたすら殴り続ける妄想をしていたので、いささか奇異な物語ばかりが生まれるようになってしまったが。

 不眠症はしばらく続き、僕が成人するまで続いたが、アルコールが飲めるようになったことで状況は一変する。

 自分への漠然とした怒りと、酷い不眠症。その二つが手を取り合い、僕をアルコール依存症という沼に向かって放り投げた。僕はズブズブと沈んでいき、いまだに抜け出すことが出来ない。睡眠時間は一日12時間だ。明らかに過眠である。

 死への願望はいまだに頭上でキラキラと輝いている。まるで僕が幼稚園児の頃に見た一番星と同じような輝きを持って、僕の根幹にガッチリと根ざしている。そして早くこちらに来いと手招きしている。僕は少年の頃の気持ちのまま、誰か一緒に行ってくれないかと辺りを見渡している。

 死とは絶対的に訪れる僕らへの現象だ。しかし僕らはそれに立ち向かう。プラスとマイナスがぶつかり合い、火花をちらす。しかしその火花は結局「死」の世界に引きずられていって、明日の夜明けの頃には見ることさえ出来やしない。僕らが死に対して思い悩むことさえ、全て死に帰結していく。生きるとはそういうことなのだ。

 僕は今でも死にたくなる時がある。早死にした友人や知人を思い返すたびに、醜く老いていく自分を恥じて今のうちに死んでしまいたいと思う。その衝動が高まると、ホームセンターに行ってロープを買ったり練炭を買ったりしてしまう。

 それでも年に何度かある美しい瞬間が僕の袖を引くのだ。

 その瞬間を思い返すと、今日ぐらいは生きててもいいかなと思う。それを明日も続けるだけだ。あとはどうなるか知ったこっちゃない。誰が何を言ったって気にするものか。いらん茶々でしかないのだから。

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