『しずくの帰る所』

如月 煌

第一章:出会い

「ねえ、お母さん、雨の音が変だよ」


千尋がそう言ったのは、10歳の梅雨の日だった。


軒下から、かすかに聞こえる鳴き声――。


「にゃぁ……にゃぁ……」


母と兄が外に出ると、ずぶ濡れの黒猫が震えていた。


「かわいそうに……。うちで少し面倒を見よう」


猫は、千尋がそっと触れると、驚くほど落ち着いた様子を見せた。


「この子、なんて名前にしよう?」


千尋が手のひらに落ちる雨を感じながら言った。


「しずく……。この子は、しずくみたいに、ここに流れついたんだね」


こうして、「しずく」は千尋の家族になった。

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