第4話 家族の冷遇と、俺の決意

 翌朝。

 

 通常、貴族は朝食を家族揃ってとるものらしい。


 俺は執事に案内され、食堂へと向かった。


 そこでは、壮麗な長テーブルの中央に座る当主――父親がいて、その隣には母親、そして兄と姉。


 フィリアはちょこんと端の席に座っている。

 

 俺の席は父親からやや遠い。


 以前からの冷遇の表れだろう。

 

 父は鋭い眼光の持ち主で、銀髪をオールバックにまとめている。いかにも冷徹そうだ。

 

「レオン、昨日は体調が悪かったそうだが、もう大丈夫か?」

 

 問いかけの声は低く、厳かな響きがあった。

 

「はい。ご心配をおかけしました。もう大丈夫です」

 

 そう答えると、母親はふっと視線を逸らし、無関心を装うようにスープを口に運ぶ。


 兄と姉は俺のことを横目で見て、鼻で笑うような態度を取る。

 

「へぇ、相変わらずひ弱だね、レオンは」

 

「学園の入学は大丈夫なのかしら? 今からそんな調子じゃ、恥をかくだけじゃない?」

 

 原作でもこんな感じだった記憶。


 俺は悔しさをこらえながら、冷静を装う。

 

「……ご心配なく。学園でも大丈夫です」

 

「ほぅ? 本当に大丈夫なのか?」

 

 兄があからさまに嘲笑まじりに聞いてきた。


 その刹那、俺はフッと心の中で決めたことを口にする。

 

「俺は魔法を極めたいんです。学園に入る前に、もう少し訓練をしたい。……父上、お願いがあります。優秀な魔術師の方を、短期間でいいので、ここに呼んで頂きたいのです」

 

 食堂の空気が一瞬ピリついた気がした。


 両親だけでなく、兄と姉も目を見開いている。

 

「魔法? お前に、魔術師としての素質があるのか?」

 

 父は訝しげに尋ねる。

 

「正直、わかりません。ただ、学園に入ってからでは遅い気がして。できるだけ早く学びたいんです」

 

「愚かしい。お前のような外れスキル持ちが、魔法など極められるわけがない」

 

 兄が吐き捨てるように言う。


 姉に至っては、完全に相手にしていない様子だ。


 母は「やめなさい」と止める気配すら見せない。

 

 それでも、俺は折れない。


 こうして馬鹿にされることは予想の範疇だ。

 

「父上、お願いいたします。学園に入ってから恥をかくのなら、なおさら先に学びたい。駄目でしょうか」

 

 その言葉に、父は息を吐き、少し沈黙した。


 先に口を開いたのは母だった。

 

「あなた、そこまで言うのなら……。ねえ? 短期間だけでも、どなたかを呼んでみては。グランフィード家の名誉にも関わりますし、入学までの数か月だけですし」

 

 母はあまり俺に愛情を注いでいないが、それでも表向きには“できない子”でもサポートするポーズを取らざるを得ないのかもしれない。


 父は腕を組んで思案し、やがて低く唸るように言った。

 

「わかった。だが、宮廷魔術師の中でも忙しい者ばかりだ。そんな都合よく指導に来られる者がいるかはわからん。期待はするなよ」

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 俺は思わず深く頭を下げた。


 やった、ひとまず第一関門クリア。


 原作のレオンは多分こんな風に頭を下げることすらせず、ただ拗ねていたんだろうな。

 

 横を見やると、フィリアが小さく微笑んでいた。


 どうやら妹は俺の奮闘を応援してくれているらしい。


―――



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