第22話 伊集院政高、駆除行為観戦
目についたのは何体もいる、四メートルくらいの高さの生白い巨人だった。目鼻もなく、出来の悪い玩具のようだ。肉塊で埋め尽くされた交差点にただ立っているだけで、大して脅威ではないように見えるが、あまり目にしない方が良いという感覚はあった。
三十体ほどいるうちの数体が、既に横倒しになっている。足立や他の、肉塊とならなかった参加者が動いているのだろう。モップとカメラを手にした若者が、伊集院を追い越して駆けていく。「今日は、皆さんが知りたがっているであろう、大きな相手をモップで倒す簡単な方法を教えます」
温海省造、市内では最強とされる探索者――それは彼の総合力を指す言葉で、本人も言っているが異相体駆除数や強さに関しては、もっと上がいる。だが、そういう輩は単に破壊や討伐が目的で、異界をむやみに荒らしたり、他の探索者に被害を出したりすることもあるし、有用な異相体を持ち帰ったりもしてはくれない。
遠くから爆発が上がったり、空から光が降り注いだりし始める。どうやらあの爆弾魔や広域破壊者が来ているようだ。他にも、この近くで普段活動している、異相料理家や呪殺中毒者が来ていてもおかしくはない。
後ろに気配を感じて伊集院が振り返ると、そこには古びたワードローブがいつの間にか置かれていた。黒ずんだそれは、鎖と南京錠で厳重に閉ざされている。
「ああ、あんたも来たのか。まあ好き勝手やってくれ、オレも好きに飲むからさ」
一瞬後にはそのワードローブは消えている。伊集院は酔いが進み、肩こりと吐き気を覚えたが、酒を飲むのをやめなかった。
巨大な爬虫類、怪獣とでも呼ぶべき存在が一体の巨人を押し倒して踏みつぶした。その隣では別の巨人が、一瞬で細切れにされている。呪詛に呼び寄せられた黒い影の群れや、倒された巨人をさっそく運ぶトラック――民間の死体漁りか、教会の食肉加工部隊か――テレビ局の取材陣や野次馬、非戦闘配信者などが徐々に集まって来て、辺りはまた賑やかになって来た。
「お主、また飲んどるのか、伊集院」
狐の面を付けた赤い着物の人物、千種諌が声をかけて来た。伊集院はああ、と答えてふらつく。
「重異相化地区での飲酒はご法度と、公団では教わらぬのか?」
「これはこれで楽しいものがあるんですよ、体に悪いのは重々承知ですが。まあ、確かに三〇〇〇Uくらいの波があったと思うんで、この一本で終わりにしようとは思ってますが。ああ、さっき九十九さんとか、ルイ君も来てましたよ。仙波と乾の奴もそこらにまだいるはずです」
「それと渡邊もおるな、奴のうち五人か六人の気配がした。まこと騒がしい奴らじゃ。儂はお主のとこの偉いさんに挨拶してくる、ではな」
伊集院はその後も三本瓶を開けてぶっ倒れた。
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