【書籍化決定】羅刹の銀河 ~取り返しのつかないタイミングで冒頭で死ぬキャラになったので本当に好き放題したら英雄になった~
第389話 タチアナちゃん、ワンオーワンちゃん、シーユンちゃん、食堂でお兄ちゃんがお待ちです
第389話 タチアナちゃん、ワンオーワンちゃん、シーユンちゃん、食堂でお兄ちゃんがお待ちです
アタシはシーユンとワンオーワンと階段の踊り場でお菓子を食べてた。
掃除が終わって報告しに行ったらレオの兄貴が小さい子が好きそうなラムネ菓子をくれた。
ラターニアに売り込むサンプルだそうだ。
帝国で売れなすぎて在庫の山だったエナジードリンク味とスパイシーシナモン味はもう定期販売が決まった。
あとウルトラストロングミントと銘打ったミントタブレットも異常なほど売れてるらしい。
帝国で失敗した菓子はラターニアで大人気だ。
ラムネはカラフルでかわいい。
シーユンが幸せそうな顔してる。
太極国はアタシと似た傾向の味が好きみたいだ。
ワンオーワンもニコニコしてる。
ぼけーっとしてる。
そういや地元にいたときは一日のほとんどをボケッとすごしてたわ。
いま考えるとやべえな地元……。
レオの兄貴たちとスケジュールの密度が違いすぎる。
士官学校生化け物すぎるだろ……。
そんなことを考えながら栄養補助のチョコバーを出してかじる。
こいつを食べないと骨が弱くなる。
ナノマシンで適度な刺激を骨に与えて、栄養補助食品を食べる。
これで健康的な肉体になるとのことだ。
そういや地元じゃこういうのもらっても秒で売り払ってた。
だから地元のコロニーの男はガリガリで女は背が低いのか……。
知識を得ると地元の問題が見えてくる。
解決方法はないだろうけどね。
なんてチルタイムをすごしていたら艦内放送が鳴った。
「タチアナちゃん、ワンオーワンちゃん、シーユンちゃん、食堂でお兄ちゃんがお待ちです」
「バカ兄貴いいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!!」
わざとだ!
わざと迷子風にしやがった。
プンスカしながら三人で食堂に向かう。
だけどそこでびっくりして固まった。
「タチアナ誕生日おめでとう」
いやあんたらこないだもやってただろ!
ほんとこいつらいつも全力で遊んでるな!
このパリピどもめ!!!
しかもアタシの誕生日は今じゃねえ。
なに考えてやがるんだ?
バカみたい……って今月は……前のアタシが死んで今のアタシが生まれた……。
そういうことか。
イソノの兄貴が話しかけてくる。
「ようタチアナ。レオとエディがどうしてもって。ほら、俺たちの妹分は今のタチアナだけだからよ」
「うん……」
言葉が出てこない。
中島の兄貴が笑う。
「ほれ、タチアナの好きなもん作ったぞ。レオが」
「うん……」
【レオの兄貴かい!】というツッコミすら出てこなかった。
それよりも、ここにいるみんな。
士官学校組の暖かさに胸が締めつけられた。
「タチアナよかったでありますな」
「……うん」
するとシーユンがつぶやいた。
「タチアナはここが居場所なんですね……いいなぁ……」
シーユンのその発言はアタシにとっても他人事じゃなかった。
だってアタシは故郷に居場所がなかったから。
シーユンだって同じだ。
ここでようやく素の自分でいられたのだ。
「シーユン……アタシは友だちだ」
「シーユン、自分もであります!」
「……うん」
【あ、これレオの兄貴の趣味だろ】としか思えないケーキが運ばれてくる。
だって花火がついてるもの。
火花がキラキラ光ってる。
レオの兄貴は【どうよ】って胸を張ってた。
もう笑うしかない。
「ば~か。なんだよその花火」
「ぬははははは! さーてタチアナちゃんおめでとー」
「【ちゃん】はやめろー!」
パンチパンチ。
兄貴たちのおかげで心のつかえが取れた気がした。
シーユンもニコニコしてる。
このまま兄貴とシーユンたちがいたら幸せだなって思ってた。
だけど数日後、アタシは兄貴に怒鳴り散らしてた。
「なんでだよ! シーユンを戻すってなんだよ!!!」
「向こうから要請があっただけだって。シーユンはどうしたい?」
シーユンは明らかに迷っていた。
そう、それは今日の朝のことだった。
太極国がシーユンの引き渡しを要求してきたのだ。
犯罪者としてじゃない。
病気で皇族がみんな死亡したため、次代皇帝として引き渡せってことだった。
ラターニアの国営放送でずっとやってる。
こんなの殺すつもりに決まってんだろ!
兄貴! 絶対渡すなよ!!!
「わ、私は……わかりません。私はここにいたいけど……でも……民のために」
「じゃ、こっちにいなさい。嫁ちゃん、それでいいよね?」
皇帝陛下。
ヴェロニカちゃんは不機嫌そうに言った。
「いいぞ。【バカめ】と送れ」
ディスプレイにルナちゃんが映った。
「ねえねえ、レオくんは屍食鬼の目的はなんだと思う?」
「向こうの勝利条件考えたらシーユンの体を乗っ取ることじゃね?」
ぶちっと頭で音がした。
「あん?」
人生で一番低い声が出た。
「タチアナ、怒るな。妾が渡すわけなかろう」
よく見たらヴェロニカちゃんがキレてた。
激怒しすぎて「カカカカカ」と笑ってる。
ルナちゃんも黒目を大きくして「ケタケタケタケタ」と笑ってる。
こ、怖い……。
アタシもだけど……二人とも完全に怒ってる。
「あ、兄貴?」
「うん、どうした二人とも?」
兄貴は……いつもどおりの笑顔だった。
「ケビン、いる?」
「どうしたの? ねえねえシーユンちゃんの引き渡し……どうしたのみんな!!!」
「うん、俺たちが甘かったことに気づいた。だからアホどもに地獄見せようかなって思ってさ。あとでドクターと会議ね」
「あ、うん。ドクターのスケジュール調整しとく……」
「うん、お願い。シーユン、タチアナ、安心しろ。俺たちが守るからな」
兄貴も笑っていた。
あ、これ……怒りすぎて逆に笑うやつだ。
あー、うん。
「シーユン。超古代兵器の本気が見られると思う」
「あ、あの、ジェスターっていう超能力者の」
「そう、アタシもDNA継いだ末裔みたいなんだけどさ」
遺伝子を継いでるからクローンに発現したとのことだ。
つまり前のタチアナもジェスターの子孫だ。
たまたま因子が表に出たのがアタシということだ。
「兄貴、アタシも手伝うッス」
「おう、いいぞー。ジェスター大歓迎!」
会議室は魔王城にしか見えなかったとさ。
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