第32話 行楽シーズンの再来
秋も深くなり、ついに秋の行楽シーズンに突入した。
今日は3連休の初日ということで、下り列車を中心に多数の臨時列車が運転されている。
そのため駅員の数も普段より多い。北村先輩曰く、本部から駅員さんを数名借りてきているらしい。
そして、俺の知り合いも広島駅に貸し出されていた。
「三条さん、久しぶり。そっちは元気だった?」
「あ、勝浦さんお久しぶりです。今日からよろしくお願いします」
入社式の時に親しくなった三条さんと約半年ぶりに再開。新幹線ホームに配属されるらしいので、一緒に仕事をするのが楽しみだ。
時間になったので朝の全体ミーティングが開かれ、今日の臨時便の本数や連絡事項などが伝えられた。
今日は、10時30分〜12時の間、下り線のメロディ立ち番を担当することになっている。このタイミングで三条さんは見学するらしいのでミスは絶対にしないように頑張るか。
ミーティングが終わったあと、本日の下り線立ち番担当の俺たちは下り線の駅員室に入る。夏に比べると気温はかなり穏やかになってはいるが、外は人の熱があるので結構蒸し暑い。
朝の立ち番を担当していた成東先輩に今日の連絡事項を伝え、早速今日の仕事に入る。
駅員室に備え付けのパソコンを開いて、冬の臨時列車運行計画提案書を作る。数人がかりで作っているので完成までもうすぐだ。
細かい確認をしていると俺の前の立ち番さんが担当する最終列車が発車した。
駅員室に戻ってきた
すれ違いぎわに「今日は乗降まじで多いから多少延発してでも細心の注意を払って安全確認した方がいいと思う。こっからまた増えると思うけどよろしく。」と声をかけられた。
次の列車までは少し間隔があったので同じ仕事を担当している先輩に立ち番時間中だけ、引き継ぎをお願いした。快く受けてくれて良かった。
そして制帽を被った直後、接近メロディがホームに鳴り響いた。
「三条さん、列車来るんで行きますよ。」
「は、はい!」
三条さんが外に出たのを確認し、立ち番装置に鍵を刺す。
接近放送が稼働している間、次の列車の乗客数をある程度確認する。お盆シーズンより若干少ないくらいだけど、この時間は上り線の方が乗る人は多いから降りる人がどこまで早く捌けるか。
「まもなく、11番乗り場にのぞみ号博多行きが到着いたします。この列車は徳山・小倉・終点博多の順に止まります。自由席は前寄り1号車と2号車です。次は徳山に止まります。ご乗車の際は車内中ほどまでお進みいただき、乗車口付近では立ち止まりませんようご協力をお願いいたします。また少しでも空いてるドアからのご乗車もお願いいたします。」
という放送をかけ、安全確認を済ませた後到着予告ベルを鳴らす。
三条さんは俺の一挙手一投足に注目し、やり方を覚えていた。せっかくなので
「三条さん、メロディ扱いやってみる?」
と質問してみると、
「え、やっていいんですか?ぜひお願いしたいです!」
と好意的な反応。
「わかった。メロディはこのスイッチを右側に回すとメロディが流れて、乗降が終わったらメロディを止めて下のスイッチでベルを鳴らして、少ししたら止めるみたいな感じ。まあ乗降はあそこのモニターで確認できるから。」
と説明していると列車がホームに入ろうとしていたところだった。
ベルを切って、
「お待たせいたしました。11番乗り場に到着の列車はのぞみ号博多行きです。次は徳山に止まります。自由席は前寄り、1号車と2号車です。ご乗車のお客様は、足元にご注意ください。」
放送をかけ終えてから数秒すると、列車が止まった。
ホームドアを開けると、しばらくすると列車側のドアも開いた。
『広島、広島です。 広島、広島です。ご乗車、ありがとうございました。』
「ご乗車ありがとうございました。広島、広島です。お降りの際は足元にご注意ください。この列車はのぞみ号博多行きです。次は徳山に止まります。」
と放送をかけ終えた直後、三条さんは発車メロディスイッチを扱った。
広島駅に発車メロディが鳴り響いている間、三条さんの目線は乗降確認モニターに向いていた。
メロディが3周目に入った頃、完全に乗降が終わったので三条さんはメロディを切ってベルを鳴らした。
ベルが切られたのを確認し、「のぞみ号ドア閉まります。安全よし。」と放送をかけた。
乗降終了合図とホームドア閉扉操作を同時に行い、戸締め灯の消滅を確認。
ドアが閉まった新幹線はゆっくりと動き出し、たくさんの乗客を載せた新幹線は博多方面へと走り去っていった。
安全確認を終え、駅員室に戻る途中に三条さんが
「メロディ扱いながら乗降見るの結構大変でした...尊敬します」
と言ってきた。俺も半年しかやってないけど?()
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