第12話 夏本番

ついに夏の旅行シーズンが、俺たち鉄道員に襲いかかった。


7月も下旬になり、学生は夏休みという長期休暇に入った頃。俺の夏休みは他の駅員の都合上8月下旬なんだけどそこで大いに楽しむために、頑張ってあと1ヶ月、たくさんのお客さんを捌き切ろうと決意した。


決意はしたが、結論として、乗客の量はそれ以上だった。


列車の本数だってそこそこあるはずなのにそれを上回るほどの乗降で延発することも多数。放送をかけないといけないことも多い上、非常に暑いので駅員はほぼ全員疲労が溜まっている。


俺は12時から13時半まで下り線立ち番を担当するので、12時まで担当していた浜岡はまおか夏樹なつき先輩から立ち番装置の鍵を受け取った。


「あ、そうだ勝浦くん。まじでホームは暑いからファンつけてね。ファンつけないと熱中症で倒れるよ。」


とのアドバイスをいただいた。しかし次の列車到着まではホーム上に出ないでおく。暑いからね。


接近メロディが鳴り響いたとほぼ同時に事務室の席を立ち、ホーム上に出る。


浜岡先輩の言葉通り、ホーム上は人の熱と自然の熱が混ざって灼熱となり、それが襲いかかってきている。


急いでファンのスイッチを入れて冷風が来るようにして、急いでホーム上の安全確認を行う。


急いでとは言うけど、それで安全性を欠いたら安全確認とは言えないだろう。


マイクを入れて喋った後、熱くなっているベルスイッチを起動させてベルを鳴らす。


そして入ってきた列車とともに、熱風が乗客と俺に襲いかかる。サウナに入っているみたいだ。


列車が完全に止まったのを確認してホーム柵を開ける。


『広島、広島です。 広島、広島です。ご乗車、ありがとうございました。』


「ご乗車ありがとうございました。広島です。お忘れ物や落とし物をなさいませんようご注意ください。到着の列車はのぞみ号博多行きです。次は新山口に止まります。」


と言い終えてから発車メロディを流し始める。


「まもなく11番乗り場からのぞみ号博多行き発車いたします。ご乗車のお客様は近くの空いているドアもご利用ください。車内通り抜けできますので混んでいるドアではなくお近くの空いているドアもご利用ください。」


と放送をかけ終えた後は、乗降が終わるのを待つ。


発車メロディが2.5cほど鳴ったところで乗降が終わったのでメロディを切ってベルを稼働させる。


「のぞみ号ドア閉まります。安全よし」


乗降終了の合図を出してホーム柵を閉める。


列車は動き出し、熱を纏った鉄の塊は西に向かって走り去っていった。



「マージで暑いな...」

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