第2話 加速する代償
佐藤亮は、アプリを使って2時間分の時間を売った。20,000円がすぐに口座に振り込まれ、彼は少しだけ安心した。しかし、その代償は思った以上に大きかった。
翌朝、亮は鏡の前で自分の顔を見て驚いた。目元には深いクマができ、頬はこけ、髪の毛には白いものが目立つようになっていた。まるで一晩で数歳年を取ったかのように。
「これは…ただの疲れだよな?」
彼は自分に言い聞かせたが、内心では不安が膨らんでいた。
会社に行くと、同僚の山田が声をかけてきた。
「おい、亮。大丈夫か?顔色が悪いぞ。」
「ああ、ちょっと寝不足で…」
亮は適当にごまかし、デスクに座った。しかし、彼の体は重く、頭はぼんやりしていた。まるで数日間眠らずに働き続けた後のような感覚だった。
昼休み、亮はスマホを取り出し、アプリを開いた。
**「今日も時間を売りますか?」**
彼は迷った。体調が悪いことは明らかだった。しかし、今月の家賃と子供の塾代を考えると、やめるわけにはいかなかった。
「もう1時間だけ…」
彼は「売る」をタップした。
その瞬間、亮は急激なめまいを感じ、机に突っ伏した。周りの同僚が慌てて駆け寄ってきたが、彼の耳には声が遠く聞こえるだけだった。
「亮!大丈夫か!?」
「救急車を呼べ!」
亮は朦朧とした意識の中で、アプリの画面が赤く光るのを見た。
**「警告:残り時間が不足しています。取引を続けると、生命に危険が及びます。」**
しかし、亮はその警告を無視した。彼は「もう少しだけ」と自分に言い聞かせ、アプリを閉じた。
その夜、亮は病院で目を覚ました。妻の美咲がベッドの横に座り、泣いていた。
「亮…どうしてこんなことに…」
「ごめん、心配かけて…」
亮は弱々しく笑ったが、彼の体は衰弱しきっていた。
医師が診察に来て、深刻な表情で言った。
「佐藤さん、あなたの体は極度の疲労状態です。このままでは命に関わります。何か心当たりはありませんか?」
亮は黙っていた。アプリのことを話す勇気はなかった。
退院後、亮は家に帰り、再びアプリを開いた。
**「残り時間:72時間」**
画面には、彼の残り時間が表示されていた。
「72時間…?そんなバカな…」
亮は驚きながらも、アプリの詳細を見ようとした。すると、そこには「時間を買う」というオプションがあった。
**「他人の時間を買うことができます。1時間=100,000円。」**
亮は目を疑った。自分が売った時間は1時間10,000円なのに、買うとなると10倍の値段だ。
「これは…誰かの時間を奪うってことか?」
彼は恐怖を感じたが、同時に希望も見えた。もし他人の時間を買えば、自分の寿命を延ばせるかもしれない。
しかし、その代償は何か?亮は迷いながらも、アプリの奥に潜む真実を探る決意をした。
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