第50話 強奪者

ー美雪目線ー


 『能力』は、能力者本人の願望や在り方が反映されて力となった説がある。


 似たような能力は存在する。


 例えば、炎や水、風などの力を操る能力や身体機能の強化をする能力、物体を浮遊させる能力、他者の思考を読み取る能力など他者と似たような能力を持っているというケースは存在する。


 だが、基本的には本人の願望や在り方が魂に刻まれ、力になったモノである以上、まったく同じ能力は基本的には存在しないとされている。


 故に能力による技は、己が使い編み出していかなくてはならない。


 また『能力』は、1人1つしか持てない。


 過去に複数能力を持てないか、実験された事があったらしい。


 結果は体が能力に耐え切れず破裂したそうだ。これには例外は存在しなかったとされている。


 また能力が覚醒していない者の魂に他者の能力を刻み込むという実験もあったらしい。


 結論から言えば、他者の能力を刻み込む行為をされた人物の体は破裂して、その人物は例外無く死ぬそうだ。


 その理由は他者の能力が体に合う事はないからだとされている。


 それにも関わらず黒焔路は複数の能力を扱えているっ!! それどころか今は亡き私の親友の能力も我が物顔で扱っているっ!!


黒焔路 焦土

「……では、答え合わせをしようではないか……。まぁ、面白みがなく、単純で簡単な答えだがね……」


美雪

「……」


黒焔路 焦土

「私の魂と体は複数の能力を所持し、扱えるだけの力があるのだよ……」


美雪

「っ!? そ、そんな事っ!? あ、ありえないっ!?」


黒焔路 焦土

「君の速度に追いつく風をまとう能力、さらに脚力を強化する能力を使用した……。君の剣技を弾く為に腕力を強化する能力を使用した……。そして、君の剣技を見切る為に相手の攻撃がどこからくるか理解する能力を使った……。これらの能力を同時に使った……」


美雪

「っ!? 複数の能力の同時発動っ!?」


黒焔路 焦土

「ああ。加速した状態の君の剣技を片手で防ぐのに、4つの能力を同時に使用させてもらった……。念の為、片手は空けておきたかったのでね……。先程の炎や水の針のような遠距離攻撃ができるようにね……」


美雪

「そ、そんな事がっ!? いや、そもそもっ!!」


黒焔路 焦土

「落ち着きたまえ……。まぁ、こういう事ができるのは……私の能力による力なのだがね……」


美雪

「……貴方の……能力?」


黒焔路 焦土

「まぁ……私の能力がバレてしまったところで……私には、なんのデメリットも生じない……。それに私に挑んだ事に敬意を示し、教えてやろう……私の能力を……」


 黒焔路は不敵な笑みを浮かべたまま言った。


黒焔路 焦土

「私の能力名は『強奪者ごうだつしゃ』……。他者から能力を強奪し、自分の能力として扱う能力だ……」


美雪

「そ、そんな事っ!? そんな事っ!! ありえないっ!! 相手の能力を強奪して自分の能力として扱う能力っ!? そんな能力っ!! 聞いた事がありませんっ!!」


黒焔路 焦土

「この世にはありえない事はありえない。意外となんでも起きるものだよ……。それに『強奪者』は、私らしい能力だと思うのだがね……」


美雪

「まさかっ!? 水菜の能力をっ!?」


黒焔路 焦土

「あぁ、そういえば……先程使った数千の水の針を出す能力は、確か君の親友の能力だったな……。水を司る能力は、いくつも強奪してきたが……君の親友の能力は、なかなか便利な方ではあるぞ……」


 私は黒焔路に斬り込んでいたっ!! 黒焔路は私の刃を剣の刀身で受け止めるっ!!


美雪

「『綿雲雨わたぐもあめ』の『水刃初時雨すいじんういしぐれ』はっ!! 水菜がより多くの人達を護れるようにとっ!! 鍛錬してっ!! 編み出した技だっ!! それを貴方のような人がっ!!」


黒焔路 焦土

「その水菜とやらの努力の結晶は……今では私のモノになってしまったがね」


美雪

「貴様っ!!」


黒焔路 焦土

「腹部がガラ空きのようだなっ!!」


 私は黒焔路に腹部を蹴られるっ!! そのまま吹き飛ばされて壁に叩きつけられるっ!!


美雪

「がっ!?」


黒焔路 焦土

「ふむ。どうした? 怒りに我を忘れてしまったのかね?」


美雪

「こ、このぉっ!!」


黒焔路 焦土

「『綿雲雨』という能力の『水刃時雨初陣』は、なかなか良い能力技だ……。遠距離で尚且なおかつ、広い範囲に攻撃を仕掛ける事ができる……。様々な応用も可能……。確実に相手を殺す事もできれば、相手を痛めつける事もできる……。殺戮さつりくにとても向いている……。残虐ざんぎゃくで、とても良い技だ……」


美雪

「違うっ!! 水菜はっ!! 水菜は殺戮をする為にその技を編み出したわけじゃないっ!! より多くの人々を護る為にっ!! 編み出した技だっ!! 護る為の技だっ!!」


黒焔路 焦土

「そうなのか? だとしたら、皮肉な事だな……。本来は護る為に作り出された技が……使用者が変わっただけで、殺戮の技として向いている事が実証されてしまうのだからな……」


美雪

「貴様あぁっ!!」


 私は黒焔路に再び斬り込むっ!! 黒焔路はその斬撃を剣で防ぐっ!! 何度も斬り掛かるが、その都度弾かれるっ!!


美雪

「このぉっ!!」


黒焔路 焦土

「怒りに身を任せた刀は、にぶく、見切りたやすい……。そして芸術的でもない……。なんともみにくい剣技だ……。現役だった頃の君の剣技は……もっと美しかったと思ったのだがね……」


美雪

「黒焔路っ!!」


 私は黒焔路の腹部を蹴られるっ!! 私の体は吹き飛ばされ壁に叩き付けられるっ!!


美雪

「黒焔路っ!!」


黒焔路 焦土

「まだ粘るのかね? 力の差さえ理解できぬほど、感覚が鈍ってしまったのかね?」


 黒焔路は左手に流力を集める。


黒焔路 焦土

「もっと私を楽しませてくれたまえ」


ー美雪目線終了ー

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