第7話 覚悟を決めろ

 僕は刀となった熊丸を握りしめ、振り上げながら奴に向かって突進するっ!! そして跳び上がり刀を振り下ろすっ!!


 奴は刃物で刀を防ぐっ!! だが刃物の刃を切り裂き、奴の右肩から脇腹まで切り裂くっ!!


能面の人

「ッ!?」


 すごい切れ味だっ!! 奴の鋼のように硬い皮膚がまるで豆腐のように切れたっ!! でも奴の傷が浅いっ!! 踏み込みが甘かったかっ!? いや、違うっ!! 奴は咄嗟に後ろに下がったんだっ!!


能面の人

「……切ラ……レタ……。……俺ノ……刃物ゴト……切ラ……レタ……」


 奴は僕に切られたところを見ながら呟いた。そして奴は僕を見る。僕も刀になった熊丸を構えながら真っ直ぐに奴を見る。


能面の人

「……スゴイ……切レ味……」


想夜

「貴方の武器は壊したぞっ!!」


能面の人

「……スゴイネ……。……久シ……ブリニ……傷ツケ……ラレタ……。……イイ……。……コノ……ギリギリノ……感覚……。……面白イ……。……楽シイ……。……ゾクゾク……シテ……トテモ……ワクワク……シテクル……」


 奴はズボンのポケットからドクロのマークがついた指輪を取り出す。次の瞬間、奴の指輪は刃渡り30センチの短剣の形になったっ!?


想夜

「っ!? 指輪が短剣になったっ!?」


『っ!? 想夜……気をつけてください……。アレは魔剣です』


想夜

「魔剣?」


『魔剣とは、特殊な能力を持った刀剣の事です』


能面の人

「……『魔剣・リッパー』……。……コレ魔剣……ダケド……特別ナ……能力ハ……ナイ……。……ソノ代ワリニ……トテモ……丈夫デ……スゴイ……切レ味……。切ラレタ……トコロノ……痛ミ……倍ニ……ナル……」


 次の瞬間っ!! 奴は凄まじい速度で斬り掛かって来たっ!! 僕は咄嗟に刀で防ぐっ!! だが奴は凄まじい速さで何度も斬り掛かってくるっ!! 奴の刃物が左肩に掠ったっ!! その瞬間っ!! 左肩を吹き飛ばされたような激痛がしたっ!?


想夜

「っ!! 痛ぁっ!?」


 僕は後ろに跳んで奴から距離を取るっ!! 左肩を見ると少し切られただけだっ!! それ以外は特になんともなっていないっ!!


能面の人

「……スゴク……痛カッタ……? ……コレガ……『魔剣・リッパー』ノ……能力……」


 な、なんて痛みだっ!? ただあの短剣に掠っただけでこんなに痛いのかっ!? 


 あんなモノがマトモに体に刺さったらと思うとゾッとする……。ちょっと掠っただけであれだけの痛みを感じた……。あの短剣がマトモに体に刺さったら……痛みで戦えなくなるかもしれない……。


『そ、想夜様っ!?』


想夜

「大丈夫っ!!」


 いや、すごく痛いからなんだって言うんだっ!? こんなところで死んでたまるかっ!! 


 生きて帰って光二や猿太郎とまたバカな事して笑い合ったり、家族と美雪お姉さんと楽しく過ごすんだっ!!


能面の人

「……イツマデ……耐エ……レル……カナ……」


 奴が再び斬り掛かってくるっ!! 右から左から上から下から前正面から様々な角度から斬撃が襲ってくるっ!! 


 速いっ!! けど奴の刃がまったく見えないわけじゃないっ!! 刀になった熊丸で防げるっ!!


 致命傷になるところに刃が当たらないように攻撃を防ぐっ!! 時々短刀の刃が体に掠って、激しい痛みを感じたっ!! けど、根性で痛みに耐えるっ!! 


能面の人

「……マダ……子供……ナノニ……良ク……動ク……」


想夜

「くっ!!」


 防戦一方だけど、少しずつ……奴の動きに対応できるようになってきた……。


 そして奴の体から青白いオーラのようなモノが見えるようになってきた……。そのオーラは奴の心臓がある左胸から出て、体全身を流れるように全身と短剣にまとっているのが……なんとなく分かってきた……。


能面の人

「……戦イノ……中デ……成長シテ……イル……。……ケド……マダ……遅イ……」


 奴がものすごい勢いで突進して来たっ!! そして奴が鋭い突きを放つっ!! 僕は刀で防ごうとするが防ぎ切れず短剣が僕の左肩に突き刺さるっ!!


想夜

「がっ!?」


 奴の短剣が左肩に刺さった瞬間、まるで左肩を爆破されたような激痛が走るっ!!


能面の人

「……スゴク……痛イハズ……ナノニ……マダ……恐怖モ……絶望モ……シテナイ……。コレナラ……ドウカナ……」


 奴は短剣をグリグリと僕の左肩にさらに押し込むっ!! 痛いっ!! 左肩を何度も内部から爆発されたんじゃないかという痛みが走るっ!!


想夜

「ぐっ!? くっ!? こ、このぉっ!!」


 僕が刀を振るっ!! 奴は後ろに跳んで距離を取るむ!! 奴の胸には真一文字の切り傷ができたっ!!


能面の人

「ッ!? ……完全ニ……避ケタ……ツモリ……ダッタ……ノニ……」


想夜

「くっ!?」


『想夜様っ!?』


想夜

「大丈夫っ!! まだ戦えるっ!!」


 さっき奴が突進してくる前に両足と短剣を持っている右腕全体と短剣に青白いオーラが集中してまとっていた……。


 これは僕の予想でしかないけど……青白いオーラが集中まとったところは力が強化されるんじゃないだろうか? だから刀で防ぎ切れなかったんじゃないだろうか……。


想夜

「ん?」


 気がつくと僕の体からも青白いオーラのようなモノが出ていた……。そのオーラのようなモノは左胸から全身に流れるように出ている事を感じた……。


能面の人

「……ッ!? ……流力……。……戦イヲ……通シテ……覚醒……シタノカ……」


 今の僕にこのオーラのようモノを操作するほどの技量はない……。また奴が突進して来たら奴の一撃を止めるほどの力はない……。血を出しすぎたのと痛みで、もうフラフラしてきた……。避けるのもキツいな……。


想夜

「熊丸。僕は僕の出せる全ての力を託す……。だから……お前の全ての力を僕に貸してくれっ!!」


『承知しましたっ!!』


 僕の体から出る青白いオーラのようなモノがまるで水のように流れ、刀となった熊丸に集まっていくのを感じるっ!!


 奴は再び突進してくるっ!! 僕に短剣を突き刺そうとするっ!!


 僕はあえて左手を前に突き出すっ!! 短剣は僕の左掌に突き刺さりそのまま左手の甲を貫くっ!! 左手を内側から破裂したような痛み走るっ!!


 だが耐えるっ!! 耐えて奴の短剣を持つ右手を掴むっ!!


想夜

「くっ!?」


能面の人

「ッ!?」


想夜

「捕まえたぁ……」


能面の人

「ッ!? ……刺サレ……テイル……限リ……激シイ……痛ミヲ……感ジ……続ケル……ハズノ……リッパーニ……刺サレテ……イルノニ……ッ!?」


 僕は奴の短剣を持った手を引っ張り自分に引き寄せるっ!! そして刀で奴の腹を突き刺すっ!!


能面の人

「ッ!?」


想夜

「我慢比べを……しようかっ!!」


 奴は咄嗟に地面を蹴って僕から距離を取ろうとするっ!! だが僕は奴の手を離さずっ!! 再び奴を引き寄せるっ!! そして再び奴の体に刀を突き刺すっ!!


 このまま防戦していたら僕の技量とスタミナ不足で奴にやられるっ!! だったらまだスタミナがある内に超接近戦に持ち込むしかないっ!! 僕の左手が使い物にならなくなってもっ!! 奴をぶった斬り続けるしかないっ!!


 左手が破裂したような痛みが続くがっ!! 気にしてる場合じゃないっ!! このまま一気にぶっ倒すっ!!


能面の人

「ッ!? ……コノォッ!!」


 奴は僕に殴り掛かろうとするっ!! その腕をぶった斬って奴を斬り、刺し続けるっ!!


能面の人

「ッ!?」


 奴が僕を蹴ろうとするっ!! 僕は地面を強く蹴り奴を地面に倒すっ!!


想夜

「ウラアアアアアアァァァァァァァァッ!!!!」


 覆い被さりさらに奴の心臓に突き刺すっ!! 


 奴の骨も肉も貫く感触が刀を通じて手に広がるっ!!


能面の人

「ッ!!」


 その瞬間っ!! 奴の左の手刀が僕の腹を貫くっ!!


想夜

「ゴフッ!!」


 僕の口から血が出るっ!! 互いに睨み合うっ!! そして奴の体から力が抜けていき、動かなくなった……。気が付けば、黒い煙は消えて無くなっていた……。


想夜

「はぁ……はぁ……」


 僕は刀を奴の体から引き抜き、立ち上がる……。そして家に向かって歩き出そうとするが……力がうまく入らず、その場に倒れ込む……。


想夜

「はぁ……はぁ……」


 僕なりに……結構……頑張ったけどなぁ……。でも……限界だ……。


熊丸

「想夜様っ!!」


美雪

「ぼっちゃまっ!!」


 薄れゆく……意識の中……熊丸と……美雪お姉さんの……声が……聞こえた……気がした……。

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