閑話:騎士について
――騎士の概念は時代と共に変化する。騎士の登場は騎馬の登場に始まり、火砲の発達によって終焉を迎える。
初期の騎士とは大帝国などに仕える文字通りの騎兵の事であり、それが崩壊した後、封建制の領主や貴族に仕える従士と言う物を騎士と呼ぶようになり、この時期から騎士は必ずしも馬に乗るわけではない存在となる。従士たちは領主や王などから土地を与えられたり、または領主の支配地域に派遣され、そこでの行政を担当する執行官となったり、軍事と行政の二つの役目をこなしていた。騎士は時代が過ぎていくに連れて実務的騎兵から、概念的な称号へと変化していく。
騎士とは必ずしも貴族ではなく、ドラニア王国や周辺領では、自由市民であればだれもが叙任の機会を持っていた。ただし、騎士とは基本的に領主に仕える者であるため、無教養で冒険者をするような者が叙任されるとは考えにくい。
宗教騎士団とか騎士修道会と言う物があるが、こちらは厳密には騎士ではない。彼らの多くは僧籍を持つ武者であり、帯剣修道士という呼び名が正しい。彼らは教会の私兵であり、西方諸国教会という一神教を信仰し、教皇庁に仕え、神の思う事を成す為に多くの資金と特権を保有している。
この時代の修道士や修道女と言う物もまた平民が容易になれるような物ではなく、その修道者はもっぱら貴族の次男・長女以下や庶子が、跡目争いを避けるなどを筆頭とした理由で放り込まれる事や、教養があり、それでいて身元の保証されているような金持ちだとか著名人だとかやその親族だけが入る事ができた。
教皇領の徴募兵と宗教騎士団員の異なる所は、宗教騎士団の構成員はすべからく修道士だという事であった。
もう一つ騎士の概念がある。〝強盗騎士〟だ。騎士は一概に裕福とは言えない。貧しい騎士や主君を持たない自称騎士や元騎士と言った連中の中で、耕作する土地や小作人を持たない者たちは、傭兵のような生活を送っている――戦争がない限り食い扶持がない。そのため、日曜の糧を手に入れる為に無辜の人々を襲撃し、略奪する。それにつけて、彼らはあるかも不明な自らやその同胞の名誉を主張し、その被害者の中に我々の名誉を穢した者がいると声高に叫ぶ。
騎士にとって、名誉を汚されるという事は文字通り不名誉で何としてでも挽回しなければならない事象だ。強盗騎士たちはその常識や制度を悪用し、自らに正当性があるとして事後承諾的に報告することで略奪を正当化している。
ほかにも橋梁や街道を占拠したり、商売人や宿屋などからみかじめ料を取ってみたり、護衛のいない隊商に粘着し、彼らから護衛料金を強要するなど、問題ばかりを起こしている。彼らは冒険者以上に諍いが無ければ生きていけない生き物であり、あまりにも度を越えた狼藉者は領主自ら討伐に赴いたり、彼らを始末するために冒険者が雇われたりすることがあった。
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