焦げ付いて綺麗に落とせない私の気持ち
音央とお
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告白にはタイミングというものがあるのだと、本当に思う。
「美澪さま、また合コン開いてくんない?」
2ヶ月ぶりに食事に誘われたと思ったら、滝本はまた新たな出逢いを求めているらしい。チェーンの焼き鳥屋などという、他の女ならこんなところに誘わないよねーというチョイスをしてくるのもムカツク。
焼き鳥は好きだけど、こいつの中では私は男友達と一緒なのだ。しかも、最近は合コンの催促の時くらいしか声を掛けてこない。
「この間の子とすぐに別れたんだね、また」
「……何度も紹介していただいているのに面目ない」
「私の知り合いっていうより、顔の広い後輩ちゃんの紹介だから見つかるけど、そろそろ長続きしてくれないと後輩ちゃんにも悪いんだけど」
「次は…次こそは……。なので、お願いします」
テーブルを挟んだ向かいに座る男が深々と頭を下げた。それを「いーよ」なんて枝豆を口に含みながら答える私も私だ。
滝本に「もう私にすれば?」という一言を掛けられない。私たちの関係は良い方向には転がってくれないだろうから。
笑うと見える八重歯が好きで、甘い顔立ちどおりの優しく澄んだ声に呼ばれたら何でもやってあげたくなる。実に都合の良い女だな、と自虐的に考える。
出逢ってから8年も煮詰まらせた想いは焦げ付いて落とせない。
どうせ合コンの催促だと分かっているのに、こいつ好みのメイクとファッションで固めていることにも気を止めても貰えないのだ。
馬鹿だけど、可愛いと思われたい気持ちは捨てられなかった。
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